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(3)
「いいよなあ、あれ。とーるだって触りたいとか思わねえ?」
「思わねえよ。俺、おっぱい星人じゃねーし」
「もったいない。おまえならいっくらでも触りたい放題触れるくせに」
言い寄られること既に数え切れず。
入学当初は先輩お姉さまから、二年になりサッカー部エースとなってからは一年のお嬢ちゃんたちから、そして三年の今、卒業を前に焦った同級生から何人もコクハクってものをされ続けている透である。
総てにごめんなさいをして、結局三年になった直後、一番身近にいた創がモテモテ透の“恋人”の座を射止めたのだ。
とはいえそんな事実は当人二人しか知らないわけで。
「まったく。おまえが俺なんかに惚れちゃったせいで、女の子たちから余計にモテなくなったばかりか、最近シットの目が怖いのなんの。俺の唯一のシュミである“おっぱい観察”さえままならなくなっちまったじゃねーか」
「悪かったね、おまえなんかに惚れちゃって」
結局二人して頬の抓り合い、という状況の中、創はここぞとばかりに不満をぶちまける。
「悪いよ。おまえのせいで俺のバラ色の高校生活がどうだよ? ちちのデカい彼女作って揉み放題、な高校生活を夢見てたのに、おまえの傍にいるせいで誰からもコクられないし。おまえが立ちはだかるせいで、まともな恋愛できねーじゃんか」
「おいおいおいおいおい! 全部俺のせいかよ?」
透の方が創より頭一つ分背が高い。
ということで、体格の差からして小競り合いの決着なんてすぐにつくわけで。
透はぐいっと創の両手を一纏めにすると、散乱している机の間にさらっと押し倒す。
「うわっ。何すんだよ?」
「えっち、したいんじゃないの?」
「したくない! えろとーる!」
「えろいよお、俺は。おまえみたいにおっぱいに反応すんじゃなくて、俺はおまえに反応すんの」
のしかかって、顔中にキスをして。
たしかに創だってそれが嫌いなわけではない。
入学した時から気が合う思ってずっと一緒にいて、親友だと思ってたのに、何故かもっともっと近い存在になってしまっていたこの、自分にのしかかるモテモテな恋人のことを、嫌いだなんて思ったことはなくて。
「ああもう! とーるにおっぱいがあったらなー」
女の子のおっぱいを揉むどころか、現在自分の平坦な胸を弄られながら、創は透の耳元に呟いた。
「こんな、ゴツゴツした胸じゃなくてさー、ふにゃーってやーらかい胸がこーやってのしかかってきたら俺、もうぐずぐずにとろけちゃいそう」
想像したのか、目を閉じてうっとりとする創から、透はむっくりと起き上がった。
「おいこら。俺がさわさわしてんのに、なんで他のヤツ想像してんだよ?」
透はムっとしながらほんの少し勃ち上がってきている創の下半身の膨らみをぎゅっと握った。
「うわ! 何すんだ、ばか!」
「オンナの経験もないくせに、想像だけで勃たせてんじゃねーよ!」
「……ひっでー! なんだよ、その言い方!」
「ひどいのはそっちだろ! 俺が触ってんだから、俺のこと想って勃てろよ! なんでヨソの女なんか想像してんだよ!」
「うるせー! ちょっとばかしモテるからっていい気になりやがって!」
「いい気になんかなってねーよ!」
「なってんじゃねーかよ! おまえなんか嫌いだ! バレンタイン、香織ちゃんとデートでもしてろ、このばか!」
売り言葉に、
「ああ、ああ、わかったよ! おまえがそう言うんだったら、女の子とデートしてデカいちち揉みあげてやる!」
買い言葉。
どん、と自分の上にいた透を押しのけ、創は「勝手にしろ!」と言い捨てて出て行ったのだった。
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