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次に創の携帯に届いたメッセージには「これでどうだ!」の文字と写真も付いていた。
実際その写真の“おっぱい”はかなり本物らしい色合いとカタチをしており、創もゴクリと唾を飲んだくらいで。
とは言え、創としては現物なんて目にしたことはなく、参考になっているのはちょっとしたエロ動画だけだが。
「とーる?」
前作から二日後、である。
かなり焦っているらしく、透はその間一度も連絡をしていなかった。
とりあえず創は受験勉強に勤しみながらも、透のことが気にならないはずがなく。
そんなメッセージを受け取った直後に透の家に駆けつけていた。
「ふふふふふ。はじめくん、今度こそキミの大好きな“おっぱい”だぞ!」
なんと今回は手作りだ、という透は嬉しそうに何のラッピングも施されていない白い箱を創に手渡した。
「……!」
中を開けると、創もかなりびっくりした様子を見せた。
箱に二つ並んだ“おっぱい”二号は、もっちりとした牛皮でできた大福だったのである。
元来の小器用な性格のせいで何でもこなしてしまう透は、台所に立つということも度々で、洋菓子和菓子共に母親と姉仕込みでさらりと作ってしまう。
今回のこのおっぱい大福。
中心部にホワイトチョコ、その周囲に柔らかさのためにカスタードクリーム、そして極めつけ、乳首に当る部分にはイチゴを持ってきた上、牛皮がうまい具合にそれを透かして見事なピンク色となっており、手触りといい見た目といい、カンペキな“おっぱい”である。
「すげ……」
創は一言呟いてから黙り込んだ。
ふにふにと人差し指で大福に触れ、その触感の心地良さに茫然とする。
勿論、幼少時の母親のもの以外、物心ついてからは現物を触ったことなどなく、女性の“おっぱい”というものがこんな触感であることは創にはわからない。
しかしながら、程よい弾力感や、その形状のリアリティは想像上のものと全く同じであり、時々見るエロ動画に出てくる“おっぱい”そのものに思えて。
「いいだろ? やーらかいし、どっからどう見ても“おっぱい”だろ?」
誇らしげに大福を創の頬にすりすりとさせ、これなら文句ないだろうと早速その身体を頂きにかかる。
「……!」
と、すりすりされるがままになっていた創が急に表情を変えて、胸を弄っていた透の手を掴んだ。
「どした?」
「冷たいじゃん」
「は?」
「こんなん、違う」
大福を今度は透の頬に当て、創がちょっとムクれた顔で言う。
「おっぱいはさ、絶対もっとあったかいハズだよな? これ、冷たいじゃん。だから、これはカンペキな“おっぱい”とは言えない!」
そんな創の主張に、透はまたしてもがっくりと項垂れた。
「……あったかい、って……」
人肌のチョコなんか、ムリに決まってるだろお? チョコはあったかいと融けるんだぞ? どうやってあったかいチョコなんか……。
「……とーる?」
無言のまま創の目の前で腕を組んだ透に、さすがに怒ったかと不安になった創が首を傾げた。
そして暫く沈黙が続き、創が妥協するしかないかと思った瞬間。
「ふふふふふふ」
透がにんまりと笑って、創を見た。
「と、とーる?」
「はじめ! おっけー、おっけー。も、次は絶対だ!」
突然おかしな含み笑いを始めた透が、急に自信満々な顔をして創の肩を掴み、
「二月十四日。補習は午前中だけだよな? それ、済んだらそのままここに来い! 勿論泊まる準備してから来るんだぞ」
命令した。
「はあ?」
「よしよしよし。うん、これぞカンペキ、ってヤツだ。見てろよ、はじめ。おまえをうっとりさせてやるからな」
透はおっぱい大福を創の手から箱へと戻し、唖然としている創の体をぎゅっと抱きしめた。
「今日はこれで我慢しとく。けど、三日後の十四日は絶対だ。絶対に俺はおまえを抱く!」
高らかにそう宣言すると、透はわけがわからないまま、されるがままになっている創の頬に軽く口付けをし、
「も、いいよ帰って。はじめ、勉強してな。んで、絶対絶対おんなじ大学入るんだぞ?」
と言って、創の肩をくるりと反転させ、部屋から追い出したのだった。
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