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襲撃の夜。まんまるい月が空高くにある。
中立交易都市ウィトルマーナの東のはずれ。
悠々と流れるミルワ河に面して、その館は立っている。
白い石を丁寧に積み上げて作ったガッシリした外壁。
大貴族の邸宅と言うほどには豪華じゃない。つつましい田舎領主の家とか、今は廃れてしまった昔の名家の血筋とか―― なんかそういう感じだ。あくまでパッと見の印象だけど。
静かだ、それにしても。ザブザブという水音だけがここにある音。
ときどき思いだしたように、町の方で犬が鳴く。
「お、ここだね」
前を歩いていたカトルレナが足を止めた。
右手でなにか、白い石壁の表面をぺたぺたさわっている。
キィィン…
音がした。小さな音だ。なにかひどく繊細な金属が震えるような。
カトルレナが触れた壁の一部が白く光る。
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