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「あんたが、『緑の姫君』だよな?」
アルウルが、横柄マイペースな質問を投げる。
同時に、じわじわじわじわ、距離をつめていく。両手のダガーは臨戦態勢。
「その名で呼ぶ者もいます。でも、わたしには正式な名前というものがありません。皆が色々な名で呼びます。姫様、領主さま、緑の公女――」
一歩も退かずにそう答えたその人物。見た感じ――
そう、たぶん十三歳くらいの女の子だ。
まっすぐな長い髪の色は白銀。だけどどういう光りの加減か、ときどきそれが緑に見えたり、でもまたもとの銀色に見え―― ひたいには、宝石をあしらったサークレットをつけてる。ゆったりまとった薄緑のドレス。その足はまったくの裸足。とても形のいい小さな二つの足が、直接石の床を踏んでる。その足のあまりも無垢な白さが、なんだか不思議に、あたしの心を強く打った。
なんだろう、この感覚?
すごく遠い深い夢の中で、もう二度とは会えない大好きな誰かを見るような―― ずっとずっとあこがれていた、いちばん大事で綺麗な何かに、今ここでほんとに出会ったみたいな?
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