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再びリリィと手を繋ぎ、ステルス機能を駆使しての地下への潜入。
いくらアリシアちゃんがたくましいと言っても、皇太子妃候補暗殺未遂の容疑者として地下牢に囚われているのだから、さすがに多少は落ち込んだり弱ったりしているかと思った。
だからなんと声を掛けようかと、私なりに気を揉んでいたというのに。
……いざ牢獄に到着すると、アリシアちゃんは優雅に豪奢な椅子に腰を下ろし、ティータイムと洒落込んでいた。
しかも牢番をしている思われる、屈強なふたりの騎士がなぜか一緒に牢屋の中に入り、彼女の方を向いてデレデレと鼻の下を伸ばしている。
その光景を前に、愕然とする私とリリィ。
どうする?と目と目を合わせての、無言のままのアイコンタクト。
すると勘の鋭いアリシアちゃんは、そこで私達の気配を敏感に感じ取ったのか、チラリとこちらに一瞥をくれた。
だから門番達があちら側を向いているその隙に、リリィと手を離して姿を可視化させるとアリシアちゃんに向かい大きくブンブンと手を振った。
ニッと不敵に歪む、愛らしいさくらんぼのような唇。
そして彼女は優雅に席を立ち、そのまま大きく足を振り上げたかと思うと、まずは一人目の騎士の後頭部に猛烈な蹴りを入れた。
そのまま意識を失い、倒れ込む巨体。
それに唖然とする私とリリィ、そしてもうひとりの騎士。
その間にもにっこりと優美な笑みを浮かべ、残る男の前に立ったかと思うと、今度は思いっきり股間を蹴り上げた。
「ひぃ!!」
小さく悲鳴を上げたのは、私の隣に立っていたリリィだ。
それを聞き、リリィはやはり無性生物などではなく、オネェ系のドラゴンに違いないと私は確信した。
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