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「こないだの大潮の時期あたりから、グマの帝国の軍船団が出張ってきてな」アタマの禿げあがった大男が、胸の前で腕を組み、渋い表情を作ってみせる。「パフィン海の北部海域、一般商船の航行は、無期限に全面禁止。帝国の許可なく海に出た船は、警告なしに撃沈する、だとか」
「ええ?? なにそれ? 戦争とか、そういうの?」
「うーん、っていうわけでも、なさそうなんだがな」そう言って男は、左手の指でこめかみのあたりを掻く。「このところ隣国のシルアーヴィアとの外交関係も良好だって言うし、南方の竜族国家グィンガも、最近はめっきりおとなしくなったって噂を聞く。南の国境も異常なし」
「じゃあなんで? なんでそんな、非常事態令みたいなのが出ちゃってるのよ?」
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