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「だから。それはな、俺らの方が知りたいっての。帝国政府の役人は、命令出すだけでこっちにはひとつも事情説明しやがらねぇからな。ったく。まあだが、おかげでこっちも商売あがったりだ。いつもなら一日に七便以上も出ているトルマリス行きの交易船が、のきなみ運休。組合員の来月の給料がどうなるのか。それすら今はわからん」
「給料とか、そんなのどうだっていいじゃない。どうせみんなNPCなんだし、失業して困るとかそういうの、リアルには全然ないわけで――」
「お嬢ちゃん、なんだか言ってることがよくわからんな。まあ、とにかくだ。うちとしては船は出せない。それはもう決まってる」
「でも――」
「だが、お嬢ちゃんがどうしても、その、メ・リフェ島に渡りたいって言うんなら――」
「え?? 船出してくれる? 出してくれるの??」
わたしは全力でカウンターに身をのりだしてその大男のゴツイ腕を両手で握りしめた。
「おいおいおい。出せないってば。うちは」
「なによ! 期待持たせないでよ!」
「まあ、だから。『うちは』って言っただろう。だが、『よそ』は、また事情が違うかもわからん」
「『よそ』? 『よそ』って何?」
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