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「いくら出すんだ、あんた?」
目つきのやたら鋭い、痩せた長身の男がこっちに声を投げた。それは予想もしてなかった言葉だったので、一瞬、答えにつまる。
「えっと。つ、つまり、船、出してくれるの?」
おもわず声が、ちょっぴり裏返ってしまった。
「先に質問に答えろ。いくら出す?」
なんとなく殺気のこもった声。じろり、と男がこちらをにらみつける。アタマには黒いバンダナみたいなものを巻いて、肩のところに不思議な模様の入れ墨がある。商船会社の社員というよりは、むしろ海賊の組員の方が近い感じがする。
「え、えっと。いま、所持金的には、ゴールドが117とシルバーが322、ですね」
なんだか気おされて、急に敬語になってしまった。ゲームだけど、相手はNPCだけど。なにげに迫力ある「その筋」っぽい男に至近距離から睨まれると、さすがにわたしも、ちょっぴりビビっちゃうところはある。
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