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その島の名前は、メ・リフェ島。パフィン海の最北部、「デトセリヴェ群島」と呼ばれる、帯状に連なる小さな島々のひとつ。ネットで調べてそれはすぐにわかったのだが。わたしが何より面食らったのは、その、冬には凍てつく最果ての島の奇妙な名前そのものではなく、むしろその島の位置―― なにしろその島が存在する、その位置は、現実のこの世界の海上ではなかったのだ。
海外を中心に、一部で熱狂的な支持を得ているフルダイブRPG「ロード・オブ・ソウルズ」のワールドマップの中。メ・リフェ島は、そのマップ上の最北端にある。つまりその島自体が、実際には存在しない架空の島。バーチャルにしか存在しない、デジタルデータが作り出す島なのだ。時間をかけてネットでどれだけ調べてみても、「メ・リフェ島」という名前は、そのほかのどこにも存在しなかった。リアルにおいても、バーチャルにおいても。
しかしともかく、死んだ姉の名を語るそのダイレクト・メッセージには、シンプルにその島の名前が書かれていた。メ・リフェ島。そこであなたを待っている、と。
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