5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ななッ! って、ちょっと! そ、そんなお金あったら、まるごと船が一艘買えちゃうじゃない!」
「なら、買ってその船でひとりで渡れ」
冷たい声で男が言った。わたしは答えにつまる。
「もしできるなら、な。ったく。これだから素人さんは」いまいましそうに、男がチッと舌を鳴らす。「こっちとしては、今言った金額が最低条件。ま、あんたの財布じゃ、とても無理だろう。さ、わかったら帰れ」
「ぶ、分割払いは?? たとえば二年で二十四回払いとか――」
「うちは一括現金主義だ。おい嬢ちゃん、もう時間も遅い。さっさと家に帰った方がいい――」
「払います。4200」
いきなり声がした。
ふりかえると、店の入り口に女の子が立っている。
最初のコメントを投稿しよう!