フォーの聖所

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「ななッ! って、ちょっと! そ、そんなお金あったら、まるごと船が一艘買えちゃうじゃない!」 「なら、買ってその船でひとりで渡れ」  冷たい声で男が言った。わたしは答えにつまる。 「もしできるなら、な。ったく。これだから素人さんは」いまいましそうに、男がチッと舌を鳴らす。「こっちとしては、今言った金額が最低条件。ま、あんたの財布じゃ、とても無理だろう。さ、わかったら帰れ」 「ぶ、分割払いは?? たとえば二年で二十四回払いとか――」 「うちは一括現金主義だ。おい嬢ちゃん、もう時間も遅い。さっさと家に帰った方がいい――」 「払います。4200」  いきなり声がした。  ふりかえると、店の入り口に女の子が立っている。
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