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「ちょ、ちょっと待ってよ。抜け駆けはダメよ。わたしが、この男と、今、交渉してたんだから」
わたしは慌てて声をあげた。なんだか、わたしを抜きで二人だけで交渉が進んでしまいそうな気配だ、これでは。
「あ、ごめんなさい。あの、特に抜け駆けとか、そういうつもりでは」
アーチャーの少女が振りかえり、きまり悪そうに少し視線を下げた。そういう仕草をすると、女のわたしから見てもおそろしく可憐だ。素直に可愛い。なんだかしかし、口調がやたらと丁寧だ。ただのプレイヤーにしては、日本語が流暢すぎる。って、もしかしてこの子もNPC?
そう思って彼女の頭の上で半透明表示されているステータスバーをさりげなくチェック。
リリア・ナーグ
LV3 HP42
どうやら普通のプレイヤーらしい。にしても、おどろいた。レベル3は低い。いかにメインのストーリークエストをスキップ・ショートカットして急ぎに急いでここまで来たにしても。ここ、『城塞都市ディエト・マギト』の推奨レベルは26以上。まあ、自分も戦闘とかクエストは最低限のみこなして、とにかく大至急で来たわけだけど、その自分でも、いま、レベル13だ。さすがにレベル3でHP42はヤバい。この街の外の敵と戦闘になったら、たぶん、攻撃一回か二回で即死するレベルだ。
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