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「わたくしとしては、その、あなたも―― えっと、アレムさんも(そこでちらっと、わたしの頭の上に視線をむける。わたしのステータスバーを読んでいるのだ。)、一緒に船で渡れるのかなと。もちろん、船に同乗して頂くのは構いませんし――」
「え! ってことは、お金出してくれるの??」
がぜん、わたしの目の輝きが増し、声のトーンも上がった。
「は、はい。それはまったく、かまいませんし――」
「おいおい。話をそっちで進めるな」
海事会社の男が、むこうから話に割りこんできた。
「さっき4200って言ったのは、ありゃ、あくまで、ひとりあたりの料金だ」
「え?」「は? 何?」
わたしとリリア・ナーグが、同時に反応する。
「ふたりなら、倍額。と、言いたいところが。こっちもまあ、そこまで鬼ではないんで。ちょっぴりまけて、ふたりで8000だ。どうだ、払えるのか?」
「こら、あんた! ぜんぜんそれ、割引率、低すぎでしょ!」
「うるせえな。貧乏人は黙ってろ。おれはそっちの可愛い方のお嬢ちゃんと話をしてるんだ」
「なによそれ! NPCのくせにわたしをブス扱いとはいい度胸だ!」
わたしはそいつの胸ぐらをつかんだ。リアルだとたぶん勇気ないけど、しょせんはゲームだ。こっちをけっして攻撃できない街人キャラのNPCだからと、ちょっぴりわたしも舐めている。
「おいおい。手癖わるいな、あんた。おれは別に、ブスまでは言ってないだろう。言葉の解釈、ひろげんなよ」
「言ってるのも同じじゃない! だいたいあんたね、NPCのくせに――」
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