5人が本棚に入れています
本棚に追加
###################
姉のまりあは、その年の二月に死んだ。
死因は水死で、他殺か自殺か、警察も判断しかねていたが、最終的には自殺という線に落ち着いた。姉のベッドの上に、アイライン用のペンシルで殴り書かれた一枚のメモが置かれていた、と。それが事実上、決定打になった。というか、たぶんそれしか証拠がなかったのだろう。そのメモを見つけたのはもちろんわたしで、そこには「ごめんね」という四つの文字が書かれていた。
それはある種の遺書のようなもの、なのだろうと。おそらく警察は解釈し、それ以上の捜査は、たぶん、行われなかった。想像するに、警察としても、18歳で風俗店勤務。という、明らかにネガティブな肩書きを持つひとりの若い女の不審死に、特にそれ以上深く関わりたくもなかったのだろう。
姉の身体は、その朝、わたしの街から少し南に離れたハヤマ市の海岸で見つかった。まりあは夜中にその海で溺れ死に、朝までには、近くの浜に打ち上げられた。発見が早かったために、腐敗や痛みはほとんどなかった。死因は水死。そして遺体の血液からは、かなりの濃度の睡眠薬の成分が検出された、らしい。
最初のコメントを投稿しよう!