術を繰(く)る者

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『紅蓮は白夜のことが好きだった。それは要するに異性としてってことで。俺も白夜のことが好きだけど、それは単純に懐くっていうかそんな感じ。それぞれに異なる「好き」だったんだけど、紅蓮のヤツ、月雲と負けないくらいの悠久のストーカーだわ。転生してまで白夜のこと追っかけてきたんだよ。その気持ちが分かっちゃったんだよ。だから恥ずかしくてまともに顔見られないーー』 そう言って、蓮は再び白夜の懐に顔を埋めた。 『俺、この先どういう感情で白夜と向き合ったらいいんだろ…』 蓮の言葉に、白夜は困ったように微笑んだ。 『私を好いてくれてありがとう』と、白夜は蓮の頭をやさしく撫でる。 『紅蓮の気持ちには…気づいていなかったこともないのだが…気の迷いだとも思っていたのだ。私は紅蓮にとって気安い同志であったし、兄のような存在でもあった。それに紅蓮には知新(さとし)という心から思ってくれる相手もいた。いわゆる普通とは懸け離れた世界で生きる紅蓮に、せめて普通に誰かと想い合ってほしかった』 白夜は白夜で、紅蓮のことを想っていた。もしかしたら、紅蓮と同じ熱で想っていたのかも知れない。 『私にとって紅蓮は掛け替えのない存在であったし、私も想っていたよ』 『それって、両想い?』と、紅蓮は白夜の胸から顔を離して白夜を見上げた。 『そうだな、両想いと言うのかも知れないな』 『フゥー!』と、テンションマックスのチマちゃんの口から心の声が漏れる。それでハッとしたらしい、蓮が我に返って『見せ物じゃないよ』と、何故か画面越しにこちらを睨んだ。 『あー、なんか認めたら楽になったかも』と、蓮は白夜から身体を離した。 『好きって気持ちは悪いもんじゃないんだね』と、蓮はしおらしく言う。 『俺は今までそういう気持ちを知らなかったから、なんか気持ち悪いって思ってたところがあったけど…でも、白夜のことを好きって気持ちを認めたら、なんか、尊いことみたいに思えてきた』 『そうだ。誰かを想う気持ちは尊いのだ』 白夜は微笑みながら静かに頷いた。
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