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『蓮、手を』
白夜に促されて蓮は手を差し出した。白夜は片手で蓮の手を取ると、もう一方の手を蓮の手に重ねる。
『このくらいの力加減で、手のひらに気を集めることはできるか?』
『ん、やってみる』
蓮は集中するように目を閉じて、右手の手のひらを上に向けた。するとそこに、小さな光る球体が現れた。
『…さすがだ。いや、予想以上かも知れない』と、白夜は感心したように言う。
『レンレン、すごいわ。完璧かも』と、チマちゃんも褒める。
『イヤミなくらい上手くできてるじゃないか』と、ユーリも驚いている。
『力加減はそのくらいだ。その感覚を覚えておくといい』ダ』
『分かった』と、蓮は頷く。
『次に、扉を開けるイメージ浮かべて。こんな感じだ』
白夜が人差し指と中指を同時に立てて、蓮の額にそっと触れる。イメージを送っているんだろうか。そんなふうに見える。
『…うん、何となく分かった。やってみる』
蓮は、さっき白夜が蓮の額に当てた指のように人差し指と中指を立てて、空中に何やら文様のようなものを描いた。
『開け』と言う蓮の声に共鳴するように、蓮の描いた文様が光の線となって空に浮かび、瞬く間に消えた。
『…完璧だ』
白夜は心底感心するように呟いた。
『そうね、きれいに開いてるわ』と、チマちゃんも満足そうに頷く。
『グレンてヤツはホントに天才だったんだナ』と、ユーリまで絶賛だ。
『んー』と、蓮が唸る。
『お褒めに預かり光栄だけど、複雑だわー』
蓮は術が上手く行ったことを手放しに喜べないらしい。
『これって結局、紅蓮のチカラのおかげだもんねぇ』と、なんだか拗ねている。
『いや、』と白夜が否定する。
『紅蓮だけの力では斯様には行かぬよ』
『だから、紅蓮のおかげってことじゃん』と尚も拗ねている。
『逆に、これがもしグレンちゃんだったとしたら、グレンちゃんはレンレンのおかげで完璧な術を使えたってことよね?』
チマちゃんはにっこりと笑う。
『ね?』と、有無を言わさぬ笑顔に、蓮も『…そっか』と答える。
『レンレン、あなたは素晴らしい才能を持っているわ。前世の自分と張り合わなくても、現世の自分と張り合えばいいわ。月並みな言い方だけど、昨日の自分より今日の自分、今日より明日、それでいいじゃない。あなたはこれからグレンちゃんを超えられるけど、過去に生きたグレンちゃんにはあなたを超えることはできないんだから。嫉妬なんてしなくていいの』
『そっか…!』
今度はちゃんと納得したらしい。すっきりした表情で答えた。
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