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『さぁ、自分で開いたゲートを通ってごらん』と白夜に促されて、蓮はゲートを潜る。
『わっ!』と、驚きとも感嘆とも取れる声を上げながら、こちらに戻ってきた。
「ただいま」と、誰にともなく言う。蓮がゲートを潜り終えると、ゲートはスッと消えた。
『追跡拒否か』と、白夜が思念通話の画面の向こうで呟いた。
『トラッキングリフューズだね』と、ユーリも頷く。
『紅蓮はよく狙われていたから、術を使うときは必ずと言うほど跡を消していた。それが染み付いているのだな』と、白夜が説明する。
『術には気配が残るものね。陰陽師にとっては命取りになりかねなかったものね』と、チマちゃんは納得するように頷いた。
「術の痕跡が残らないように、勝手に消えるってこと?」と、蓮が尋ねる。
『左様。蓮の場合は己で意識せずとも、無意識的に痕跡が消えるように術を発動させているらしい。ともすれば足跡を消す方法は教えずともよいかも知れぬな』と、チマちゃんの方を見る。
『そうね。また別の術を使う機会があれば、その時にまた改めて確かめましょう』と、白夜を見た。いつの間にかこのふたり、蓮の師匠として息がぴったり合っている。
『チマちゃんと白夜、なんだかすごく仲良くなってないか?!』とユーリが気を揉む。
『何を心配してるの?』とチマちゃんがからかうように言う。
『アタシたちはレンレンの師匠として意気投合しただけよ』
『そうとも』と言いながら、白夜は楽しそうだ。
『…だったらいいけど、』と、ユーリは面白くなさそうに言う。
「あー、なんか、今ならユーリのその気持ち分かるかもー」と、蓮が呟いた。
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