届かぬ想い

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「え、」 と、陽月は絶句した。 「あの、私は現世では女として転生したの」 「それは、見たらわかります」 「じゃあどうして、」 「アタシの恋愛対象は女です」 「え、えぇっ!?」と思わず声を上げたのは僕だ。 あぁ! そういうことだったのか! 寿々華が「絶対にない」と言い切ったのは、このことを知っていたからだったんだ! 「ネコっち。この際だからもうひとつ教えてあげる。先に寿々華を好きになったのはアタシだよ。アンタは前世でも現世でも、アタシから好きな人を取ったんだよ」 ふーっ、と、雪乃は派手に息を吐き出した。 「寿々華のことは、仕方ないと思ってるけどね。寿々華はアタシのこと友だちとしてしか見られないし、アタシじゃなくてアンタを好きになったんだし。あ、でもアンタたち別れたんだったね。残念」 僕は突然のカミングアウトに付いていかれない。ただただポカンとするしかなく、その半面できっとすごい間抜け面してるんだろうな、などと客観視する自分もいる。 「あ〜ぁ。な〜んで前世の記憶なんて出てきちゃったんだろう。こんなのなかったら、ずーっと友だちでいられたのに。ただちょっとの嫉妬も忘れてたのに。なんの因果だろうね」 もしかして、仙理のせい?僕が仙理としての記憶を取り戻して、陽月も月雲として覚醒した。その影響なんだろうか? 「ごめんなさい」と、陽月が口を開いた。 「もしかしたら私のせいじゃないかな。月雲は浮雲のことがすごく心残りだったから、もしかしたら現世を去る前に浮雲を探したのかも」 陽月は雪乃の手を取った。 「月雲は、もし現世で貴女を見つけることができたら、きっと貴女が幸せであるようにと願ったと思う。もしかしたら、その願いが届いたから浮雲の記憶が蘇ったのかな。でも、もしそうだとしたら、そのせいで貴女は混乱してしまった。ここへ来たのは、尋常じゃない胸騒ぎがしたからなの」 陽月は再びぎゅっと雪乃を抱きしめた。 「ごめんなさい。前世でも現世でも貴女を苦しめたのは私。貴女の想いに応えられなくてごめんなさい」 「謝らないで」と、雪乃が陽月の腕の中で声を震わせる。 「これはアタシの自分勝手な思いです。決してあなたを困らせたいわけじゃない。思いが叶わなかった腹いせをしただけ。アタシこそごめんなさい」 そう言うと、雪乃なスッと陽月から身体を離した。 「頭が冷えました。アタシどうかしてたわ。きっと、混乱してたせいだね」 そう言う雪乃の目にはうっすらと涙が出て浮かんでいた。 「ネコっち、ごめん。迷惑掛けたね」と、雪乃はペコリと頭を下げた。 「いや、僕こそ、ごめん。大元は僕の前世にあるよね。前世のせいでごめんなさい」 「あはは!前世のせいでごめん、って、なんか斬新なジョークみたい」 「本当に、何の因果なんだろうね」と、陽月も苦笑いした。
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