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「まぁ、往々にして人の心は変わりますからねぇ」
「まぁ、そうだよね。それは僕にも経験があるから分からなくもない」
「そうでしたね。寿々華さまは元奥さまでしたね。そして今は陽月さまと言うあ…」
「もー!いいよ、その話は!」
僕はなんだか居た堪れなくなってハレの言葉を遮った。
陽月とはその後、特に変わりなく進展もなく、幼なじみの延長のままだ。互いに想い合ってはいる、はず。でも、だからと言ってすぐにどうかなるというほど、滾るようなものはない。それほど僕は若くない。いや、老いとか若いとかそれは関係ないのか。単に、僕には滾る想いというものがないというだけなのかな。
「それにしても、あの時のことを引きずっていたというか、まさかそれが僕に対する想いに繋がっていたなんて…どの時点でそうなったんだろう?さっぱり分からない」
「コタさまと雪乃さまは、お互いに思いがあるとか、そういう雰囲気になられたことは、」
「ないね。全くないし、その前に僕には寿々華がいたし」
「ですよねぇ。過去に何があったのかは存じませぬが、とにかくおふたりの間に何か特別な想いがあったことは、」
「ないんですよねぇ。少なくとも僕の方は皆無と言ってもいい。僕の雪乃に対する気持ちは友情以外のなにものでもなかったよ」
そう言い切ると、はぁ〜っと、ため息が出る。
どうしてこうなった??
「あの、」
と、おずおずとハレが右手(前足?)を挙げて挙手する。
「ワタクシが雪乃さまのお目に掛かることは可能でですか?」
「あぁ、別に無理ではないよ。ココで仕事の打ち合わせをすればいいし。となると、みんなで集まることになるから、下手なことをしないように気をつけないと、だけどね」
「承知いたしました」
「でも、なんで?」
「コタさまはワタクシの能力(チカラ)を覚えておいでですか?」
「あ!」
そうだった。
ハレには、相手の言葉の真偽を見破る能力があるんだった!
「なるほど、彼女の言動から真偽を推し量ると」
「はい。それでコタさまの憂いが晴れるのなら、ですが…」
「是非ともお願いしたい。今のままでは陽月にも悪いしさ」
「あぁ、なるほど、そういうことでしたか。いつまでも進展がないので、ワタクシは内心でヤキモキしていたのでございます!」
「…それは、どうも」
ネコ(正確には猫又だけど)にまで心配されていたとは…!
「それで、次の打ち合わせはいつされるのでしょう?」
「明後日の午前中にすることになってるんだけど、場所はまだ未定だったから丁度いいかも」
いい加減、場所を決めないといけなかったけれど、雪乃と会うのが正直なところ憂鬱でそれどころじゃなかった。このタイミングでうちを打ち合わせの場所に選ぶのは、誤解を招くかも知れない。いやはやしかし他のメンバーもいることだし、深読みし過ぎだろうか…
「とりあえず、メンバーに打ち合わせの場所を連絡するよ」
「何か分かるといいですね」
「ハレくん、よろしくお願いするよ」
「承知いたしました、コタさま」
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