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ピーンポーン
「え、」
僕とハレは顔を見合わせた。
雪乃との通話からまだ10分も経っていない。
「誰だろう?まさか雪乃じゃないよね」
言いながら僕はインターホンのカメラをオンにした。
「!!」
雪乃だ。
当初の約束の時間まで、まだ30分以上ある。
「さっきの電話は近くから掛けてたのか…」
「何やら思惑があるように思えますね。他の皆さまが来られなくなったのは、偶然でしょうか?」
「そこまで疑ったらキリがないけど…あり得るのかも」
雪乃に対して警戒心を抱いている今、彼女の行動の全てが怪しく思えてしまう。こういうのを疑心暗鬼と言うのだろうか。
「とりあえず、応答しなきゃね」
僕は意を決してインターホンの通話ボタンを押す。
「はい」
『月下でーす。ごめんね、早かったよね。近くまで来てたからさ』
「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと待って」
僕は通話ボタンをオフにして、ハレを振り返る。ハレも緊張しているように、どことなく表情が強張っている気がする。
「ハレ、いきなりだけど準備はいい?」
「はい。望むところでございます!」
ハレの尻尾がぴぴぴっと震えた。
武者振るいってやつ?
僕は玄関に向かい、扉のロックを外す。そしてゆっくりと扉を開けた。
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