届かぬ想い

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不意に雪乃がハレの方を向いた。 「やぁ、ネコくん。キミ、猫又だろ?」 凄むような低い声で、雪乃がハレに言った。 「さっきから何だい?尻尾の振り方が怪しいんだよ。さてはそれでネコっちと会話してたんだな?」 「え、ちょっと、何言ってるの??」 僕は慌てて雪乃の腕を掴む。 「離せよ。とぼけなくてもいいよ。アタシも見えるから」 さっきまでとは雰囲気が違う。まるで別人だ。 「あ〜ぁ!計画が狂っちゃった」 ギロリとこちらを睨むその目には、憎悪の色が見える気がする。 「ネコっちさぁ、なぁんでいつもいつも、アタシから取っちゃうの?」 「え?何言ってるの?」 雪乃は「フンっ」と、鼻を鳴らすとにやりと不敵に笑う。 「あぁそっかぁ。な〜んにも事情を知らないもんね。分からない人に言っても仕方ないんだった」 チッと忌々しそうに舌打ちすると、今度はハレを睨む。 「ネコくん、君は何をどこまで知ってる?」 言われてハレは固まっている。フリーズ状態だ。 「ふふふ。猫又だもん、人語を解するのくらい訳ないだろ?何なら喋るくらいするだろ?」 雪乃は何を知っていると言うんだろう。ハレのことを知っているのか、それとも猫又という存在について知っているのか。 「あはは。そんなに警戒しないでよ。じゃぁこっちの情報を開示しようじゃないか。ねぇ、仙理さま」 「なっ、、、」 なぜ、どうして? 仙理のことを知っていて、僕が仙理だと言うことまで分かっている。 雪乃は一体、何者なんだ。 「せんりって、」 「誤魔化さなくていいよ。分かってるんだから。けど、そっちはアタシが何者なのか分からなくて困惑してるよねぇ」 雪乃はさも楽しそうにくくくくと声を漏らす。 「さぁ、アタシは誰でしょ〜うか?」 あははははっと笑う声は、もう猟奇的に聞こえてくる。一体どうしてこうなった?? 僕にはさっぱり分からない。雪乃が何者かなのかもさっぱり見当がつかない。 「うふふ。困ってる?困ってるよねぇ。戸惑うよねぇ。誰だか分かんない相手に意味不明なこと言われてるんだもん、混乱すらしちゃうよねぇ。あはははっ!」 そういう雪乃はとっても楽しそうだ。真綿で首を絞めながら相手がジワジワとダメージを受けるのを楽しんでいるんだ、きっと。 「あのね。アタシは別にアンタを傷つけようとかそう言うんじゃないんだ。ただ、アタシが苦しんだようにアンタにも苦しんでほしい。ただそれだけ」 自分と同じように僕にも苦しめ? ってことは、僕が(というか仙理が)彼女を何らかの形で傷付けたと言うことなんだろうか。
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