面会

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面会

 自分のことを心配して訪ねてきてくれる人というのは有り難い。  保育士の仲間なんて仕事が終わってからわざわざ来てくれて私を励ましてくれた。 「早く元気になって保育園に戻ってきてね」  月並みな言葉だったとしても、直接言われると心に響く。  復帰するのが怖いなんて言えなくなる。  まだ私は必要とされているんだ。逃げるわけにはいかないんだ。だから覚悟を決めておかないと。  そんなふうに思ったりもした。 「危険な目に合わせてしまってすみませんでした」  森下園長もいらっしゃった。  園長は自分に落ち度などないのに頭を下げてきたので、沙織は逆に恐縮してしまった。 「とんでもないです。私がもう少し注意していれば良かったんです」 「いえ、兆候は前から出ていましたからね。もっと解決策を講じておくべきでした」  保育園の騒音問題というのはどこでも発生している問題なのだという。  沙織としては、子どもたちが楽しそうに遊んではしゃぐ声を微笑ましく思ってしまうが、子どもと縁のない人たちにとって、子どもの声というのはただの騒音にほかならない。  誰だって昔は子どもだったはずである。元気いっぱいに騒いでいたはずである。だけど、成長して立派な大人になった人たちは、自分たちより下の世代に対してそれを許容できないらしい。  そしてそのような人が一人でもいた場合は保育園側は配慮を求められる。理不尽なようだが、どうしようもなかった。  法によって特別に守られておらず、権利と権利がぶつかった場合は、裁判で勝った方が正義なのだった。 「うんどうかいの写真なら任せてよ」  妹の住倉千春には今回初めて『うんどうかい』のカメラスタッフとして仕事をお願いしていた。  まさかお見舞いに来てくれるとは思わなかった。  先輩カメラマンが写真付きの記事を書いて大手メディアに売り込んでいたりする人のようで、その人に頼んで今回の傷害事件と騒音問題を記事にしてもらおうよと提案されたけれど、沙織は丁重にお断りすることにした。  これ以上、あの男の人を刺激するようなことはしたくなかった。 「なんでよ。悪いのはアイツでしょう? お姉ちゃんは被害者じゃない。何でお姉ちゃんが配慮しなければいけないの?」 「私のことはどうでもいいの。だってこれは保育園全体の問題なんだから」 「そうかな? 私はちょっと違うと思うんだけれど」 「お願いだから勝手なことはしないでよ」 「わかったよ」  千春はそう言いながらも納得しかねる様子だった。
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