疾走する鬼   ~誠編~

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疾走する鬼   ~誠編~

誠は早朝から市場に出掛け、その帰り道だった。少し離れた所にどこか見覚えのあるものがよぎった。それはふらっと幽霊みたいに歩いていた。 ふぅーー。 朝から嫌なもん見ちまった…。 誠は頭を抱え込んだ。 その幽霊に男が数人囲んだかと思うと、介抱するように幽霊を連れ去ろうとしている。 「やべっ!!」 素早く走り出そうとした瞬間、何かにがっしりと捕まれた。振り返り怒号を浴びせようと意気込むと相手の気迫がそれを上回っていた。 「それ、今すぐ納屋に入れるんだよな?」 「へっへい!あったりめぇですよ!」 「そうか。てめぇが明後日の方向に走り出しそうだったんでな。気になったんだ。止めて悪かった。」 「い、いえ…。し、失礼いたしやす!」 お……おっかねぇ……。 幽霊の方角を捉えながら、誠は急いで納屋へ走った。用事を片付けて幽霊の方角へ向かった。 くそっ!!あの野郎!!! どこ行った!!!!! 誠は血眼になって探し回った。 落ち着け…。焦ると何も見えね。 深呼吸。深呼吸。 そうして落ち着かせていると、聞きたくもねぇ声が響いてくる。 はあ…。いい加減にしてくれ。 怒気が肚の下の方から押し上げてくる。 刃物はねぇか? ふん!運が良かったな。 鬼が声のする方を睨んだ。 女が複数の男に弄ばれ、身体中の液体を垂れ流している。 見るんじゃなかった。 鬼は溜め込んだ怒気を吐き出すように駆け出した。馬よりも速いのではないか?と思う程の迫力があった。
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