天空の廃墟

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 ふと、僕は思った。もしかすると、バルクは、宝探しをしている冒険家という役のキャスト・ロボットだったのではないか、と。そのAIが狂ってしまったものではないか、と。最後に火竜が火口の中へと入っていくのがチラッと見えた。  僕もパズルもセブも黙って魔法ランドの方を見つめた。魔法ランドは傾いた先の方から土塊のようにぼろぼろと崩れていった。そして、さらに傾き、そのまま地上へと落下していった。落下する魔法ランドを眺めながら、僕らはゆっくりと地上へと滑空していった。    あの日、魔法ランドへ訪れたことを誰にもしゃべらないと僕らは三人で誓い合った。セブのケガは河原で転んだということにしておいた。大人たちはみな、魔法ランドが落下したのは老朽化が原因なのではないかと疑った。  天空のレジャーランド法により、魔法ランドの下は立ち入り禁止区域になっていたため、死者もケガ人も出なかった。後に、詳しい調査が行われたけれども、人間の遺体は一つも発見されなかった。もしかするとバルクはうまく脱出して、どこかで生きているのかもしれない。  この落下事故により魔法ランドの原子力電池の核燃料と保管してあった放射性廃棄物が大量に漏れてしまった。そのため、この地方一帯は立ち入り禁止区域になり、僕らは住み慣れた町を離れなければならなくなった。  この事故があったせいで、国会でも、バブル期に多く建設され、その後のバブルの崩壊によって経営破綻し、廃虚化した天空のレジャー・ランドやリゾート施設の老朽化が問題となった。それらがまたいつ崩壊し、今回のような落下事故を起こすともしれない。これらの老朽化した施設をなんとかしなければならない……。議論には上がったけれども、結局、そのまま天空に放置されている。所有者の許可が、とか、探しても所有者が見つからない、とか、処分する費用は誰が負担するか、法律の整備がどうのと、また空疎な議論がえんえんと繰り返されるだけだった。その間にも天空の廃虚の老朽化が進んでいくというのに。今、僕らの国の頭上にはいくつもの天空の廃虚が浮かんでいる。そこには原子力電池が積まれており、いつ、落下し、放射性物質がこの地上にばらまかれるかもしれないというのに。     1
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