天空の廃墟

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 今から四年ほど前のことだ。僕が住んでいるこの小さな田舎の町で世界中のニュースで取り上げられるような大事件が起きた。人類がこれまで経験したことのないこの出来事によって、僕の町は一夜にして世界中の人々に知られる場所になった。そのおかげで、この小さな田舎町に日本中から、多くのマスコミ関係者や野次馬が集まってきた。もっともあんなものをえんえんと長い行列をつくって見たところで、つまらないものが目に入るだけだ。そうそう。大臣とか首相とかもお供をぞろぞろと引き連れて視察に来たかな……。  ――これはその四年前の話だ。  僕らは泥に足をとられながら葦をかきわけて進んでいた。この日、学校が終わった後、僕らは近所を流れる大きな川の河原を探検していた。    この葦の原の奥には、誰も知らない浮島や三日月池があるかもしれない。もし、そんなところを発見したら、学校でみんなに自慢してやろうか。いや……、やっぱり秘密にして、僕たちだけの隠れ家にしよう。人気のない河原は僕をそんな気分にさせてくれた。僕の前でもくもくと足を抜き差ししているパズルも、そんな気分にとらわれていたのだろうか。 「ねえ……」と僕の後ろから心細げな声が聞こえてくる。「こんなところまできちゃって、迷ったりしないかな……。暗くなったらどうする?」セブの声。「そうするとあいつが出るかもよ」 「あいつって?」僕は言う。 「ほら、最近、夜になると家畜や作物を獲っていくやつ。僕のうちでは鶏を二羽やられた」 「うちは干しておいた大根だ」 「ねえ、犯人はやっぱり風の獣だと思う」 「どうして?」 「だって、鶏を血の跡も残さず丸呑みできるようなやつなんて風の獣しか考えられないじゃないか」 「風の獣が大根を喰うのかな」 「食べるさ。あいつは食べられるものなら何だって喰うんだ」 「風の獣なんていやしないさ」とパズルが言った。 「だって見たやつがいるよ。大きな翼を持って家畜を襲って空へ飛んでいったって」 「家畜といたってニワトリぐらいだろ」  やがて、他愛のない会話は途切れ、気が付けば、暮れなずむ空の下を、僕らはただ黙って足を進めていた。風もないのに、セブが「風が出てきた」と一人ごちるのが聞こえた。  と、僕の前を歩くパズルの足が止まった。 「どうしたんだ? パズル」と僕は声をかけた。
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