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みんなでランチして、うたた寝して、また海に入って。さぁ帰ろうって車に戻る途中、ポツリ、ポツリと雨粒が落ちてきた。あっと言う間に目の前が見えなくなるほどの土砂降りへと変わり、私たちは各々雨をしのげる場所へと避難した。 「はぐれちゃったなー」 私とケンタは木の下へ。私を幹の方へ寄せ、吹き付ける雨と葉の間から落ちてくる雨粒に当たらないように、ケンタは盾になった。 『優しいね』 「ん?」 『ううん、何でもない。これどれくらい降るのかな?』 「10分くらいだよ」 雨の音に声がかき消されないように、自然と顔が近くなる。だけどわたし達は、その会話以降喋るのをやめて、じっと雨の動向を見守っていた。 「…好きだけど、一緒にいたくない」 『え?』 不意にケンタが話し出した。 「……好きだから、一緒にいたいと思う。俺は」 そうだよね。そう言おうと思って顔を上げると、大粒の雨が一粒ポタリと頬に落ちた。見上げた先のケンタも濡れている。ふと視線がずれて、ケンタの目は私の頬を流れる雨の行方を追っていた。 落ちることなく顎先に留まった水滴。ケンタの指がそれを拭って、そのまま顎を持ち上げた。濡れた髪に手が差し込まれ、触れた唇。私は彼のキスを受け入れた。 「……ずっと一緒にはいられないから…今は一緒にいたい」 『……うん』 もう一度、息が止まるようなキスをして。ケンタは私をしっかりと抱きしめた。雨が止むまで、ずっと、ずっと。 ケンタは紳士的だった。自分の部屋に連れ込もうと思えばできたのに、彼は私をホテルに送った。 「いつこっちを発つの?」 『3日のお昼…』 「今日が9月1日だから…明後日か…」 『うん』 ねぇ…あんな情熱的なキスをしておいて、本当にこのまま私を帰すの? 「……なぁ…やっぱりうち…」 『行っちゃおっかなぁ!』 「え?」 『ケンタんち、行っちゃおっかなぁ!』 うじうじしてるくらいなら、走ってみればいいじゃないか。どっちに向かって走っても、未来しかない。だったら、少しでも気持ちが傾いた方へ。 欲しいと思った方へ。 「大歓迎。荷物持っておいで」
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