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日本語だ。顔つきからしても日本人だと思う。
シャワー中に急いで出てきたのか、目の前にいる男から水滴が滴り落ちている。程良く焼けた肌に、しなやかに鍛え上げられた筋肉。バスタオルを腰に巻いただけのその姿に、私は顔をしかめたまま釘付けになっていた。だって心の中じゃ”すっごくいい身体~!!”って興奮してたから。これはもう彼氏の有無は関係ない話。
訪ねてきたくせに何も話さない私をおかしく思ったのか、男は「キミはダレ?」と英語で話しかけてきた。
『あ、あの…私…』
「あぁ…日本人……で、どちら様?」
どっからどうみても私は日本人。だけど日本語が分からないと思われたのかな。
『あの、ここって添田の部屋じゃありませんか?』
彼の名前を告げた。ルームメイトがいるなんて聞いていないから、友達なのかも。
「ソエダ?そんな奴知らないけど。ここは俺んち」
『……嘘…』
「そいつを訪ねてきたの?住所確認してみたら?」
あぁ、なるほど。隣の建物かもしれない。私は彼から送られてきた住所を確認するために、視線をスマホに下げた。目の端にチラリチラリと映り込むバスタオル。別に狙って見てる訳じゃないけど、体勢によってはちょっとカタチが分かっちゃって、私は慌てて顔を上げた。
『この住所なんですけど…分かりますか?』
男はじっと画面を見つめて、その次に私の顔を見た。
「これ、ここの住所」
『え”?!』
「だけど住んでるのは俺。間違えてんじゃん?聞いてみろよ、本人に。じゃーな」
無情にも、目の前でパタリと扉が閉まった。
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