初日、おひとり様

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……え、どういうこと? 私は目の前の路地に飛び出して、急いでメールを…と思ったけれど、彼の職場を尋ねれば問題解決だと気が付いた。 そこにはタクシーを使って問題なくたどり着いた。近代的なエリアにあるオフィス街の一角。私は迷うことなくドアを開けて、中へ。カウンターで旅行の相談をしている家族やパンフレットを眺めるひとを横目に、私はスタッフだと思われる人に話しかけた。彼の名前を伝えて、出てきてもらうように伝える。 「添田ですね」 声が明るいことに安堵したのも束の間、次の一言が私を地獄に突き落とした。 「3カ月前に本社に戻りましたよ。連絡取りましょうか?」 本社というのは、日本にある。ということは、彼は日本にいて、キューバにいるフリをしながら私とメールしてたってことだ。頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。 『…い、いえ。とくに連絡しなくて結構です』 ふらふらと、覚束ない足取りで出ていく私。なんだこれ。あまりの出来事に、目眩がした。
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