7人が本棚に入れています
本棚に追加
「何者って、神だよ、神。食欲の神。もしくは金銭の神?」
「やめてよ。あんたアホなんだから、あとでご飯代を体で払えとか言われるんじゃないの」
「ないない。見るからに無害そうな人だもん」
言いながら、優奈のチョコレートに手を伸ばす。素早く腕を叩かれたけど、「代返してあげるからこのあと講義サボって行く合コン、楽しんできてね?」と言うと、すっと手を引いてくれた。
「……で。その、奢ってくれる人ってどんな人なのよ?」
「えっと、身長高くて、髪の毛サラサラで……。まぁ、一言で言うと、神」
性格は真面目で穏やか。
躊躇なくSランチを頼める程度にはお金持ち。
行き交う女子が全員二度見するほどのイケメン。
それが、ミタライくん。私が持つ上っ面の情報を総合してみても、やっぱりミタライくんは神だった。
「で、なんでその神さまがあんたにご飯奢るわけ」
ふわっとした返答ばかりの私に、優奈は呆れてため息をつく。
「さぁね。何回聞いてもはぐらかされるんだよね。やっぱりさ、恵まれない人々に施しを与えるのが趣味なんじゃないの? 神々の遊びよ」
「だとしたら、ちょっと感じ悪いよ。人にご飯奢って優越感にでも浸ってんのかな」
優越感。
その時、ふと、ミタライくんが呟いた言葉を思い出した。
〝ありがとう〟
ご飯を食べ終わったあとの別れ際。ミタライくんはいつも、学食の前でそう言い残してから去っていく。
いや、ありがとうは私の方なんですけど? なんで奢ってる側のミタライくんがお礼言うわけ?
そう突っ込んでみたけど、ミタライくんはただ、女子受けしそうなはにかみ笑顔を見せるだけだった。
「……そういうわけじゃ、ないと思うけど」
ぽつりと呟く。
でも、じゃあなんで、といわれるとさっぱりわからないのだった。
最初のコメントを投稿しよう!