神さまじゃない君と。

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  「何者って、神だよ、神。食欲の神。もしくは金銭の神?」 「やめてよ。あんたアホなんだから、あとでご飯代を体で払えとか言われるんじゃないの」 「ないない。見るからに無害そうな人だもん」  言いながら、優奈のチョコレートに手を伸ばす。素早く腕を叩かれたけど、「代返(ダイヘン)してあげるからこのあと講義サボって行く合コン、楽しんできてね?」と言うと、すっと手を引いてくれた。 「……で。その、奢ってくれる人ってどんな人なのよ?」 「えっと、身長高くて、髪の毛サラサラで……。まぁ、一言で言うと、神」  性格は真面目で穏やか。  躊躇なくSランチを頼める程度にはお金持ち。  行き交う女子が全員二度見するほどのイケメン。  それが、ミタライくん。私が持つ上っ面の情報を総合してみても、やっぱりミタライくんは神だった。 「で、なんでその神さまがあんたにご飯奢るわけ」  ふわっとした返答ばかりの私に、優奈は呆れてため息をつく。 「さぁね。何回聞いてもはぐらかされるんだよね。やっぱりさ、恵まれない人々に施しを与えるのが趣味なんじゃないの? 神々の遊びよ」 「だとしたら、ちょっと感じ悪いよ。人にご飯奢って優越感にでも浸ってんのかな」  優越感。  その時、ふと、ミタライくんが呟いた言葉を思い出した。 〝ありがとう〟  ご飯を食べ終わったあとの別れ際。ミタライくんはいつも、学食の前でそう言い残してから去っていく。  いや、ありがとうは私の方なんですけど? なんで奢ってる側のミタライくんがお礼言うわけ?  そう突っ込んでみたけど、ミタライくんはただ、女子受けしそうなはにかみ笑顔を見せるだけだった。 「……そういうわけじゃ、ないと思うけど」  ぽつりと呟く。  でも、じゃあなんで、といわれるとさっぱりわからないのだった。  
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