7人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「まぁた〝神さま〟のこと考えてんの?」
目を開けると、呆れた顔で私を見下ろす優奈と目が合った。
優奈はいつもお昼を彼氏と過ごしている。だけれど彼氏が課題で忙しい日は、こうして私のところへやってくる。都合のいい女になるのは癪だ。だけれど優奈はいつもお弁当から一品わけてくれるから、私はいそいそと芝生の上から起き上がり、優奈が鞄からお弁当を取り出すのを待ってしまう。
だけれど、いざプチトマトを差し出されても今日はそれを受け取る気になれなかった。
「……やっぱさ、嫌われたよねぇー。私」
ミタライくんと微妙な別れ方をしてから、五日が経っていた。
その間、私の気持ちはずっと沈みっぱなしだった。なんであんなことを言ってしまったのだろう。五日前の自分を殴りたくなる。ミタライくんからしたら、青天の霹靂だったに違いない。
だって、私も意味がわからないのだから。
「さあねぇ。そんなに気になるなら今から行って謝ってくれば? まぁ、私としてはこのまま友人の怪しいパトロンが消えてくれたらうれしいけど、あんたにとっては死活問題なんだろうし」
優奈の言葉に、そうじゃないの、と返す。
体育座りのポーズをして、膝に顔を埋めた。
「奢ってくれなくなるからとかじゃないの。あんまりにも理不尽な怒り方しちゃったから、きっとミタライくん、傷ついてるんだろうなって思って。でも合わせる顔がなくてさ……」
思い出す。世界が終わってしまったかのようなミタライくんの表情。
唯一の肉親に捨てられた、幼い子供みたいだった。
あの時ミタライくんは、どんな気持ちだったのだろう……。
すると、不意に優奈が素っ頓狂な声を上げた。
「……ミタライ?」
顔を上げると、優奈がじっとこちらを見つめていた。
「ミタライって。もしかして、御手洗、春翔?」
「あー、フルネーム、たしかそれだわ。知ってんの?」
「知ってるよ! え、あんた今まであの、御手洗くんと会ってたの⁉︎」
急に優奈のテンションが上がった。思わず引く私に、かまわず優奈は話し続ける。
最初のコメントを投稿しよう!