神さまじゃない君と。

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   気づくと、私は構内を走っていた。  緩やかな坂を全力で上る。楽しそうにご飯を食べている人々の脇をすり抜け、道の真ん中でたむろしているグループの輪を引き裂きながら、敷地の奥へと向かっていた。  目指すのは、児童学科の校舎だ。 〝御手洗くん、二年の頃登校拒否になって、そのまま自主退学したんだよね。……いじめられてさ〟  優奈の声が、頭の中を駆け回っている。私は目をつむり、賑やかなキャンパスを走り抜けた。  なに、それ。  なんだ、それ。  そんなの、聞いてない!  児童学科にたどり着くと、片っ端から教室のドアを開けていった。  どの部屋にも充満している、明るい笑い声。つかの間の休息に弾む空気。   でも、ミタライくんの姿はどこにもない。 〝御手洗くんって顔もよくて頭もよくて、非の打ち所がないでしょ。それであまりにも目立つものだから、クラスの男子に標的にされたらしくて〟  唇を噛んで、校舎を出た。  そして、今度は当てもなく外を走り回った。生徒が集まる中央広場。木漏れ日が心地いい木のテラス。  でも、ミタライくんはどこにもいない。  そうだ、こんなところにいるはずがない。  だってミタライくんは、いつも極力目立たない、学食の隅の席を好んでいたんだから。 〝最後に見かけた時、御手洗くん、昼休みに校舎の裏で一人でお弁当食べてたんだよなぁ。私、気になって話しかけようとしたの。そしたら逃げられちゃって、今でも心残り……〟 「ミタライくん!」  遠く、木の影にさらさらした髪の後頭部が見えて私は叫んだ。  ミタライくんは切り株のベンチに座っていた。  大学の端、児童学科からだいぶ離れた林の中。他に生徒の気配はなくて、ただただどこからか鳥の声だけが聞こえてくる。誰もいない、何もない、空っぽの空間。  ミタライくん。  ……金曜以外は、こんなことろに、いたの?  
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