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〝世の中には二種類の人間がいる〟
多くの偉人がそんなことを言っては度々人類を分断してきたらしいけど、大学の門をくぐり始めて早半年、私もとうとう人類を分断する境地に達したらしい。
その成果を今、発表したいと思う。
世の中には二種類の人間がいる。
それは、お金を持ってる人間と、持っていない人間だ。
「あ、ちょっと違う。お金を持ってる大学生と、持ってない大学生、だわ」
「……それ、どういう意味?」
前の席に座っているミタライくんが、きょとんとした顔で私を見返した。
私たちは二人、学食でお昼ご飯を食べていた。
十三時を過ぎた食堂『あさひ』は、いつものように生徒たちでごった返していた。部屋の中央、長机が並ぶエリアはもはやすし詰め状態で、皆隣の人に肘をぶつけないようせせこましく箸を動かしている。そんな中、私たちはVIPさながらに窓際の丸テーブルを陣取っていた。ミタライくんはいつも、二限の授業が終わるとすぐさま食堂へ走って居心地のいい席を確保してくれる。
え、なにそれ。私とゆっくり話したいがためですか? ミタライくん、もしかして私に恋してる?
ついそう聞いてしまったけれど、答えはざっくり言うとノーだった。何重にもオブラートに包まれた肌触りのいい否定に、私は安いプライドをへし折られながらも納得した。
なんとなく、ミタライくんは恋愛に興味がなさそうな感じがしていたから。
「ミタライくん、よく聞いて。この世の大学生はお金持ちと貧乏人に二分されてるの。たとえばさ、このランチSセット千五百円。これ、生徒のうちの半分は在学四年間で一度も食べずに卒業するわけよ。わかる?」
特に根拠はない私の持論に、ミタライくんはいつも興味深そうに頷いてくれる。
「そうなんだ」
「日本は各地で格差社会が進んでるけど、この大学も例外じゃないの。どこかの誰かが幸せを感じてる時、どこかの誰かが泣いてるってわけね。つまり、私が何を言いたいかというと」
私はプリンの上のさくらんぼを口に放り込んだ。
小学生の頃、入学祝いに連れていってもらったファミレス以来の、おしとやかな甘さが口の中に広がった。
「ミタライくんは神ってこと。ひもじい農民に、こんな豪華なご飯を恵んでくださりありがとうございます。どうぞ来週も、よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げる私に、ミタライくんはきれいな二重の目を細くさせてもじもじと笑った。
「佐伯さんが喜んでくれるなら、僕もうれしいな」
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