イタイ台詞とお花畑

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イタイ台詞とお花畑

〈貴方のお名前は?〉 明るいBGMとともにプレイヤーの名前設定のページが開かれた。 いきなり最難関の問題だ。 「「誰の名前にするか」」 「これはやるといい出した美夜だな」 「いやいやこれは持ってきた唯月だよ」 誰も地雷ヒロインに自分の名前すら与えたくないので押し付け合いが始まった。 結果、私になった。 「いやいやいやいやおかしいって私こんなキャラじゃない」 私の紹介をしようか。 海代唯月(みしろ いずき)。 コミュ障陰キャだ。 クラスの人には真面目でおしとやかと思われているが実際は毒舌。 何故最初に自己紹介しなかったのか。 それは地雷ヒロインのようなスタートになるのが嫌だったからである。 私の名前は海代唯月!自由奔放部に入ってるんだ!....みたいなスタート絶対嫌だろ。 そんなこんなでゲームが始まった。 〈私の名前は海代唯月!今日からこの学校に転校するんだ!〉 〈ちゃんと馴染めるかな?〉 「うっわこの時点でもう無理やわ」 「唯月....乙」 「私こんなキャラじゃない!!」 〈そんなことを考えていると曲がり角で....〉 〈ドンッ〉 〈キャァッ!〉 〈誰かとぶつかっちゃった!〉 〈ごっ...ごめんなさい!〉 〈イテテ...大丈夫だよ〉 〈それより君は怪我してない?〉 〈はっ...はい!〉 〈よかった...女の子が怪我したら大変だからね〉 「臭い台詞だね」 「攻略対象もイタイわ」 〈キュン♡(私からぶつかっちゃったのに心配してくれるなんて...優しいな)〉 「これでキュンってなるのは重症ですねお薬出しときます」 「いやもう末期だろ」 「薬効かないと思う」 〈同じ制服...でも学校で見たことないな...〉 「別に普通じゃね?」 「生徒全員を見たことあるやつなんて居ないから」 〈今日から転校する二年生の海代唯月です!〉 〈同い年じゃん!敬語じゃなくていいよ〉 そして一緒に登校するという流れだった。 この攻略対象は、深風のようなキャラだった。 「この攻略対象深風に似てるね」 「俺こんなイタイ台詞言わないから」 その後もプレイしていったが.... 「なぁこれ一向に選択肢出てこなくね?」 「それな」 ひたすらストーリーを見ていくだけのものだった。 そして攻略が終わった。 唯一出てきた選択肢は最後に誰に告白(攻略)するかというものだった。 「クソゲーじゃん」 「唯月ちゃんの頭がお花畑過ぎて殺したくなりましたね」 「唯月って言わないであれ私じゃないから!!でも風花なら許す!!」 「風花好きすぎだろ」 「「可愛いもん」」 美夜とハモる。 「わかったから黙れ」 「酷っ」 私が風花と話して最初にキャラ崩壊したのは風花が 「好きなものが一緒で嬉しいです!」 と言い、 「あらやだ何この子可愛い」 と思わず口から漏れてしまい風花のセコム2となった。 セコム1は美夜である。 「下校時間だし帰ろうぜ」 深風が言い、かれこれ三時間近くプレイしていたことに気づく。 そして校門を出た。 「あっ!唯月!」 「あっ....遥香」 するとゲームを勧めてきた超本人と出会った。 こいつは三笠遥香(みかさ はるか)。 私の幼馴染だ。 恋愛脳で、よく恋愛漫画や乙女ゲームを勧めてくる。 恋愛マンガは別に良いのだが乙女ゲームはやる時間ないしそういう系好きじゃないんだよな....。 「ゲーム面白かった?」 「うん!楽しかったよ」 「やり終わったから返すね」 「はやっ!」 「普段ゲームで遊んでばっかのやつを舐めんな」 「じゃあね!」 そう言って別の友だちのもとに向かっていった。 「めっちゃ猫かぶってるじゃん」 「思ってもないこと言っちゃってさ」 「これが"私"だよ」 「物静かで気になったから思って声かけたのにすっかり化けちゃってさ」 もともと一人でボッチ極めてたが物静かで気になったという理由で声をかけられ一緒に行動するようになりいつの間にか素を出して自由奔放部に入れられていた。 「まぁ結果的に友達出来たし良かったよ」 「風花と言う尊い推しもできたし」 「お巡りさんこいつです」 「あっ俺ここ曲がるからじゃあな」 一人だけ家が遠い遊飛と別れる。 その後もそれぞれ家の方向に別れていき、一人になった。 曲がり角を曲がり、小さな商店街を通ると新しい店が出来ていた。 「おっ!唯月!これお母さんに渡しといてくれ!」 「はーい」 母さんは子供の時からこの辺りに住んでいたらしく更に陽キャだったので顔後広い。 加えて美人でモテたらしくファンクラブまで出来ていたとか。 なので私も商店街では有名だ。 近所の子供からは陽キャから生まれた陰キャといじられるが。 声をかけてきた八百屋のおじさんに新しく出来た店について聞いてみる。 「新しく出来た店なんの店なんですか?」 「それがよくわかんねぇんだよな」 「中は暗いからよくわからないし不気味で誰も声をかけないのよね」 服屋のおばさんが話に加わる。 確かに店の中は暗くて何があるのかわからないし見るからに怪しい。 「そうなんですね、ありがとうございました」 「気をつけて帰ってね?」 「ついでに瑞希さんに俺のこと良い感じにアピールしといてくれ」 「あんたに瑞希さんは無理よ」 瑞希と言うのは母さんの名前だ。 あとで紹介しよう。
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