ケーキと一緒に召し上がる

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「はぁ~……」  髪と体を洗い終わった蓮は、湯船に浸かり、思いっきり足を延ばして寛いでいた。  冷えた体に温かいお風呂が沁みる。  偶然とはいえ、来て早々にお風呂に入れたのはありがたかった。 「スーツはハンガーに掛けておいたわよ。あと、着替え置いておくね」 「ああ。ありがとう」  パウダールームの智穂は着替えを置き終わると、そのまま出て行くのではなく……、身に着けたルームウェアを手早く脱いでいく。  智穂が持って来た着替えは二着。男性ものと女性もの。  つまりは……。 「もう体洗い終わった?」 「へっ?」  突然バスルームの扉が開け放たれ、一糸纏わぬ姿の智穂が入って来た。 「なんでよ!?」 「なんでって……。私が私の為にいれたお風呂に、どうして入っちゃいけないの?」 「いや俺が入っているじゃん」 「あっ! あんまりジロジロ見ないでね。明るいところで裸見られるの、恥ずかしいから」 「無視ですか……」  智穂は体を洗い、シャンプーも済ませると蓮に構わずバスタブに滑り込んだ。 「ちょっと詰めてねー」  二人が入ってもゆとりがある大きなバスタブ。智穂のマンションはバスルームが広く、バスタブもまた広かった。 「今日は何でケーキ持ってきてくれたの?」  バスタブの中で向かい合う。  濡れた智穂の髪から雫が落ちる。 「取引先から直帰だったんだけど、途中美味しいって噂のケーキ屋があったのを思い出したから、最近新作の執筆で忙しい兎国院先生に差し入れしよう、と思って」 「それは嬉しいけど、蓮も食べたかったからでしょ?」 「そりゃあそうさ」  蓮は意外と甘いものが好きだ。営業という仕事柄、色々な場所に行くことになる。取引先の近くに評判のお店があれば、買って帰ったり、一人で外食したりする。  要するに、美味しいものを食べるのが趣味だと言える。 「これでも心配しているんだよ? ちょっと前まで『スランプだー! 何も思い浮かばないー!』って言っていたから」 「まあねー」  智穂が体ごと後ろを振り向き、背中を蓮に預ける。 「あの頃は彼氏と別れたばっかりで、そのメンタルがモロに影響していたからさー。本当に頭がそれでいっぱいで、何も思い浮かばなかったんだよね」 「今はもう大丈夫?」  二人の体が密着し、蓮が背後から腕をまわす。冷え切っていた手はすっかり温まっていた。 「お陰様で。蓮のお陰でストレス発散できているよー」 「それはよかった」  蓮が背後から智穂の首を舐める。 「もう、すぐ舐める……。くすぐったいんだけど」 「後で噛ませてあげるから」 「いい匂いがする。シャンプーとトリートメントと、智穂の匂い」 「同じシャンプー使ったでしょ。何度も言うけど、彼女作りたいならそのやたらと嗅いだり、舐めたりする癖、治した方がいいよ」  智穂が蓮の腕を持ち上げ、そして噛みつく。 「んっ――……智穂もね。新しい彼氏ができたときは、噛むのは止めた方がいいと思う」 「大きなお世話ですぅ。私はちゃんと我慢できるから」 「どうだか」 「それよりも――。お尻に何か硬いモノが当たっているんですけど」 「匂い嗅いだからかな? それか智穂のことを舐めたからかも」 「いや、噛まれた時くらいから、急に硬くなっていたよ。やっぱり痛くされるのが好きなんじゃない?」 「そんなはずない」 「どうかなー」 「ねぇ――」  蓮が耳元で囁く。 「ケーキの前に智穂のこと食べちゃいたい――」  いつもより低めのハスキーボイスで囁かれ、智穂の身体が甘く疼く。 「……兎国院先生の新作で、こんな台詞はどう?」 「私の小説はそういうイヤラシイ台詞、出てこないから」  大きな掌が乳房を撫でる。決して小さいサイズではないが、蓮の掌に包まれると、智穂は自分のバストが縮んでしまったのではないかと錯覚する。 「手、大きいよね」 「そうかな? あんまり人と比べたことないから分からないな」  胸やお腹を撫でながらも、耳や首筋を舐め続ける。  バスタブの中で後ろから抱きつかれている智穂は、満足に抵抗することができない。精々蓮の腕を噛むことくらいだった。  蓮のしなやかな指で愛撫され続け、徐々に下腹部が熱を帯びていく――。  それを見越してか、智穂の閉じられた太腿の間に、大きな手が割って入る。 「あっ……!」  抵抗する間も無く、長い指が智穂の芯をなぞる。 「――濡れてる」 「誰のせいだと……」 「もうここで食べちゃおうかな」  蓮が硬く熱い楔を智穂の臀部に押し付ける。 「それはダメ。ゴム無いんだし」 「ベッドまでお預け?」 「そうだよ。お風呂で、なんて、恋人同士ですることだよ」 「基準はよくわからないけど……俺たち恋人じゃないもんな」  蓮がバスタブから出て、智穂に手を伸ばす。 「ベッドまでエスコートしますよ。お姫様」  手を取り立ち上がる。 「――カッコつけても、その大きくなっている部分のせいで台無しかだから」  台詞と表情と興奮した体のアンバランスさに、智穂は苦笑してしまった。
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