第0章 麗愛の前置き。

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私があの例の置き手紙を見つけた日から津玲那は行方不明になった。 それから私はそりゃもう大変だった。 学校中で噂されるし、警察に呼ばれるし、先生からも呼び出されるし。 テストがあったんだけど正直勉強とかしてる暇なんかあるわけが無い。赤点くそくらえ。 「本当に変わった様子でなかったんだな?」 「はい。」 毎日毎日、先生や警察におんなじ質問をされる。そこから捜査が進んでいないんだなぁって思う。 現に今も理科室へ行く途中、廊下で先生に呼び止められた。マジめんどくさ。 「そうか。呼び止めてすまんな。赤坂も何かあれば教えてくれ。」 「はーい」 一応いい子ちゃんなので笑顔で適当に返しておく。 ちなみに、先生や警察にあの置き手紙のことは言っていない。なんとなく。 「ねぇねぇ〜、れいあいー。だいじょぉーぶなかんじぃ〜?」 可愛く顔をかしげるのは1年のときから仲がいい、絹雪芦鹿(ろしか)。 芦鹿は一部の女子からはぶりっ子、あざとい系女子といって嫌われている。でも、私は芦鹿はもともとそういう性格だと思う。ちなみに芦鹿は1番仲がいいが、あの置き手紙のことは言っていない。 「う〜ん、もう1ヶ月ぐらいかなぁ。津玲那、帰ってこないからさぁ。」 「そーいってるわりにはぁ、心配してないかんじなかんじぃ〜?」 「前もこんなだったしね。そのうち帰ってくると思うんよ。」 そう。津玲那は去年も夏休みぐらいに一週間程行方不明だったのだ。 あの時はほんと心配した。 あの子がけろっとにこにこ笑いながら帰ってきたときは、私は大泣きしながら叱ったのだ。 でも、さすがに1ヶ月だ。私もああ言いながらだんだん心配になってきた。 「ま〜ぁ、つれなちゃんってぇ、なんかぁ、不思議なかんじなかんじだしぃ〜。でもぉ、ろぉはあのこ、すきなかんじだよぉ?」 「まあね、あの子も敵多いから。」 私の周り、敵多い人ばっか。
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