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私が新しく入れ直したココアをすすって緩芭は問いかける。
「もう一度ききます。本当に後戻りできませんよ?」
「いいわ、戻れなくなったら進むだけよ。」
澄まして答えると緩芭は軽く目を見開いて笑った。
「ええと、それじゃあ私の立ち位置についてから話しますね。」
そっと目を伏せる緩芭。
その姿はどことなく津玲那に似ていた。
「私は旅行者と呼ばれる組織のようなものの一員なんです。
ええと、さっき世界について話しましたよね?私たち旅行者は、その沢山ある世界をとびまわっているんです。小説の中に入るように。まあ、同じたとえになりますが、簡単に言えば小説の中に飛び込むみたいな感じで捉えてもらって。」
「なるほどね?つまりこれはファンタジーと。緩芭は異世界人だと。」
「そうですねぇ。麗愛さんの感覚で言うとそうなります。」
あまりそう思っていないような声音だった。
熱くもないのにココアにふぅふぅと息を吹きかけ、緩芭はそれをひと口こくんと。
私はココアを飲む気になれず、猫のマグカップを手の中で弄ぶ。
ココアを飲んでばかりでその先を話さない緩芭に私はイライラし始める。
「それで?」
話の先を催促すると緩芭はもうひと口飲んで話し始めた。
「その私たち旅行者と敵対している旅行者を監視、捕縛する組織があって、その人たちを管理者と言います。」
「・・・管理者?」
どこかで聴いた・・・見た・・・記憶がある。
考え込む私を緩芭は覗き込む。
「どうしました?」
ぱちぱちと瞬きをする緩芭に私は首を振って先を促した。
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