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管理者と旅行者と。
「旅行者と管理者は同じように組織されているんです。
両組織共に上の位から順に、『統率者』『四天王』『十二衆』『二十四公』となっています。同じ位の中でもランク付けをされていて、第何位と表されます。
それに加えて、管理者は2つの派閥に別れています。統率者の『まに』を支持する『まに派』と、四天王の第1位の『彪』を支持する『彪派』があり、その2つは根本的に対立しています。
そして旅行者は管理者までハッキリとしていませんが、統率者の『にくろ』を支持するDB《ダブルブラック》、『みしろ』を支持するTW《スリーホワイト》、更に四天王第2位の『蒼(あお)』を支持するBB《ブルーブラック》、四天王第3位の『朱(あか)』を支持するRB《レッドブラック》の4つがあります。ただ、この4つは対立していると言うよりまとまりごとに名前を付けた、って感じです。
それで、私の立ち位置についてなんですれけど、私は旅行者二十四公第16位です。なので管理者に追いかけられる側ですね。」
そう笑う緩芭。
私はイマイチ、というかほとんど話についていけていない。だってそうじゃん。急にそんなこと言われても.........。
にこにこしながらまた冷めてきたココアを飲む緩芭。
私もつられてココア1口飲む。が、思っていたより冷たく、顔をしかめる。
緩芭はそんな私をみて、すくっと立ち上がる。
そして優しく微笑む。
「麗愛さんは、どちらの側につきますか?」
「.........は?」
「ですから、管理者と旅行者のどちらに入りますか?」
これは、軽々しく決めていいことでは無いのだろう、きっと。ていうか、
「管理者と旅行者って、何が違うの?何をする組織なの?」
まず、そこを詳しく知りたい。
「あー、ええとですね。まず、旅行者は、観光や、遊び目的で他の世界へ飛ぶ人たちの集まりで、管理者はその旅行者を取り締まる人たちです。組織力としては管理者の方が高いですが、仲間意識が高いのは旅行者ですかね。」
「なんで管理者は旅行者を取り締まるのよ。別にいいんじゃない?」
「ええ、ただ観光するだけならば。ですが、大半の旅行者は、その世界の主要人物に接触しようとします。そうすると、世界の形が変わってしまうのです。」
「世界の形が変わるってどういうこと?」
「ええとですね、例えばタイムスリップして100年前に飛んだとします。そこで誰かを殺したら、100年後の現在も変わってしまう、というのは分かりますか?親殺しのパンデミック的なやつです。」
「なるほどね?でもさ、別に殺さなければいいんでしょ?じゃあそんなことする人あんまいないでしょ。」
「いいえ?もし、夫婦になるはずの2人組が出会うはずの場所でその2人が出会うのを邪魔したとしたら、その夫婦の子供が生まれません。そこまで大袈裟でなくとも、主人公にこれからの事を教えたりして、物語の結末を変えてしまうことも可能なのです。そして、物語の結末を変えたいと思う旅行者は少なくはない、ということです。」
そこまで私たちは議論をして一息つく。
緩芭はココアの入っていたマグカップを人差し指でぶらぶらさせて、持っていない方の手で頬杖をつく。
「まあ、ゆっくり考えてください。今、答えを出さなくても良いので。管理者の側と会ってから決めるのもいいですし。」
面倒くさそうな声を聞いて私ははっとする。
「え、まってなんで私はどっちかに入る前提なの?そんなめんどくさいこと嫌だからね。」
なんで目をぱちぱちさせるの、緩芭。
心底不思議そうに緩芭は私に問いかける。
「え、言いましたよね?後戻り出来ないって。それから麗愛さん言いましたよね?前に進むだけだって。麗愛さんはもう、この話を聞いてしまったので。」
「言ったけどもさ。」
なるほどね?
私の平穏な日々は音を立てて崩れ去ったと!!!
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