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で、帰ると"こいつ"がいた。 見た目は見るからに犬。でも人の言葉を話す、しかも日本語だ。 だがここは集合住宅の9階のワンルーム。ペットはもちろん禁止なのだ。 「お前、俺の言葉がわかるだろ?」 何を言っているんだこの犬。 「会話の形式上、質問を投げかけてはいるが、別にお前の思考は理解できる。お前は俺のことを理解しきれてはいない」 ああ、その通り。全くわからない。 「率直に説明するが、俺のこの身体は今この地球上でお前の視界に捉えられる形としては1番親しみのある形状に変体していると推測する。」 いやいや、だからわからないって。もっと分かりやすく説明してくれよ。 「つまり、俺は正しく言えば犬ではない。今は犬の形を借りた何かだが本来は違う。」 じゃあ本当は何なんだよ。 「俺は概念であり無。お前の能力の具現化的存在であり、お前と世界を繋ぐ存在。そんなとこさ。」 あーだめだ、またわからなくなっちまった。 「服を脱いでみろ」 へ? 「いいから。」 なんだこの犬、そういう趣味か! 「お前の裸体に性的興奮はない。さっさと脱いで鏡を見ろ」 言われた通り、渋々上着を脱いで上半身が裸になる。筋肉質なわけでもなく、肥満体質なわけでもない中途半端な肉体の身体が鏡に写っていた。 「…何かいつもとおかしくないか?」 ん?たしかに、何かが違う。いつもと。 「よく見ろ」 あ、れ、ほくろがなくなってる…… 「お前は今朝のあの"一撃"で完全にホクロを消費しているからな」 ホクロを消費…? 「ああ、お前のホクロはただのホクロじゃない。お前自身もそれを確認したんだろ?」 たしかにあの時、全身のホクロが一点集中し、落下物の衝撃を吸収した。あれはもう幻とも言いきれないし、魔法と言っても過言ではない超常現象だった。 「あれは偶然じゃない。お前自身の能力だ。」
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