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4
「ひとまず支度をしろ、ここを離れるぞ」
は?ここは俺の家なんだが。しかも帰宅したばかりだし。
「時期にヤツらがくる。死にたいのか?」
何か言い返してやろうと思った最中、あの事故の瞬間の記憶が脳を過った。せっかく幸せ人生真っ只中だってのにこんなところで死にたくない…
「わかったよ…」
「よし、今から1分30秒以内にここを離れる。玄関を開けたら左に走り出せ。後ろは振り向くな」
細けぇな、なんなんだよ。
上着を羽織ってリュックサックを背負って玄関を開いてふと右をむくと黒い人影のようなものが
「走れッ!!!!!」
犬が叫ぶ、背後から銃声
なんなんだよ!どうなってんだ!!
高鳴る心臓の音が銃声よりも大きく聞こえた。
マンションのエントランスをぬけて外に出た。
明日から7月、これから楽しい夏がはじまるんだ俺はなんとしてでも生きなければ…
「……ッ」
身体が、うごか、ない…
遠くから不気味な笑い声が聞こえる、追いつかれたのか。
「くふふ……」
段々と幻影のような黒い物が遠くから現れて人の形になっていくのが見える。でも直感で理解出来る、コイツは人間じゃねぇ。
「やぁ…"コラプサー"。今は"人間"の形をしているのかい?」
何言ってんだこの野郎言葉の意味がわからない
「あぁそうか、完全擬態だと記憶も一時的に消失するのか…つまり、だ、私が今何を発しているのかキミは理解できない、ってことだよなぁ?」
ニヤニヤとした顔が俺の顔面に近づいてくる気持ち悪い
「その気になれば私をあの星々のように消すことも可能だろう?どうした?何もしてこないのかあ?」
星々?消したってなんだ…
「なあに、貴様が仕掛けてこないのならこちらからいくぞ?」
黒い男が右腕を振りかぶってこちらに殴りかかってくる、終わりだ。
「さようなら俺の青春、
と言いかけようとした瞬間、バシッ!という凄まじい衝撃音が炸裂した
だが不思議と痛みはなかった
目の前で攻撃を防いだのはあの"犬"だったのだ
ただし、さっきと違って今は人型に変化した不気味な犬になっていた
「…間に合ったようだな」
筋骨隆々とした人型の犬が黒い男の拳を捻り、腕をへし折り道路に投げ捨てた
しかし黒い男は平気そうな笑みを浮かべ大きく後ろにジャンプしてこう言った
「おいおい、こっちもあまり浪費はしたくないんだ勘弁してくれよ」
その刹那、道路に落ちたはずの腕は溶けて液状になり黒い男の身体に吸い込まれていく
そしてまた元の腕に再生したのだった
「お前のホクロが回復するまで時間をかせぐ、今は逃げろ」
犬が背中でそう語った。
あぁ言われなくたって逃げるさ、こんなことに巻き込まれてたまるか
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