藤花心中

1/2
前へ
/9ページ
次へ

藤花心中

 ひらひら、ゆらゆら。  眼前で、白いスカートの裾がひるがえる。  藤の花咲く舞台の上で、ひとり彼女は踊っていた。  よろめきながらも大胆にステップを踏む、その脚は細く頼りない。 「ねぇ、あなた」  消えゆく星の、最後の瞬きがごとく、彼女は笑う。  つま先立ちの青白い素足がいじらしく震えた。 「わたしと心中してくれる?」  答えの代わりに、骨の浮き出た腰を強く抱き寄せる。  どうか、どうか、この一瞬を永遠に。  そのためなら、たとえこの命を投げ出したって惜しくはないから。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加