1人が本棚に入れています
本棚に追加
藤花心中
ひらひら、ゆらゆら。
眼前で、白いスカートの裾がひるがえる。
藤の花咲く舞台の上で、ひとり彼女は踊っていた。
よろめきながらも大胆にステップを踏む、その脚は細く頼りない。
「ねぇ、あなた」
消えゆく星の、最後の瞬きがごとく、彼女は笑う。
つま先立ちの青白い素足がいじらしく震えた。
「わたしと心中してくれる?」
答えの代わりに、骨の浮き出た腰を強く抱き寄せる。
どうか、どうか、この一瞬を永遠に。
そのためなら、たとえこの命を投げ出したって惜しくはないから。
最初のコメントを投稿しよう!