『第15話 のろい』

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『第15話 のろい』

 ノットソン  『依頼人だよ。』  ダジャレー  『なんと、はやく、この、部品の山、かたしてくれたまえ。』  依頼人  『ダジャレー先生、お隣のミス・テリーに訪ねてきたら、あなたを紹介されまして。いま、依頼料金、二割引キャンペーンとか。』  ダジャレー  『え? そんな話しは、まったく……』 ノットソン  『まさしく、さようです。で、どのような、事件でしょうか。』  依頼人  『まさに、世にも恐ろしい話です。わたしは、呪い山とも言われる、高低中山神社の管理人をしております。神官は、跡継ぎが上手く決まらないまま、いまだ、空席です。ただ、お隣のお寺には、若い住職がありまして、非公式に兼務しています。』  ダジャレー(気乗りしないようす。)  『ほう。』    依頼人  『古くから、広い神域を持ちまして、その大部分は森林です。いつの頃からか、他人に恨みを抱く人たちが、藁人形や木製の人形を持ってきて、釘などで木に打ち付けますが、暗に対象になる人の分かるようなもの、写真とか、髪の毛とか、使用していた何かを張り付けたりもします。特定の御神木ではなくて、ご神域の木なら、どれでも使ってしまう、時間も気にしない、というのが、特徴ですが、だれが、いつ、何のために始めたのかは、諸説ありますが、良くは分かりません。あまり古くもないとされまして、明治以降だとされます。もちろん、私有地ですし、倫理的にも感心しないし、何かあったら、偶然にしろ、嫌ですし、発見したら取り外しまして、しばらくしたら、一時に、おたきあげします。しかし、それで、実際の犯罪を防止しているのならば、必ずしも悪くないと、先代の神官さんが考えていたらしく、訴えたことはありませんでした。しかし、今回は、実害が出たらしく、管理人3人と、住職で相談して、御伺いに上がりました。』  ダジャレー(ちょっと、気になりだした。)  『なにがありましたか?』  依頼人  『はい。じつは、今回は、四人を一纏めにした木製の人形が使われました。接着剤で、板を裏表に張り付けてありまして、しかし、その一部が剥がれていて、なかに、写真が埋め込まれてありました。ただ、うまく剥がれないので、全体は見えませんでしたが、管理人のひとりが、接着剤とかを扱う人で、剥がし液とかを駆使して、剥がしてくれたんです。これが、その中身です。』 ダジャレー  『おお。これは、宇宙妖気が溢れている。』 ノットソン  『ほんとかいな。接着剤の臭いだろ。』 ダジャレー  『そうかな。』 依頼人  『結構臭いますよね。まだ、新しいんだろうと。で、一昨日、市内のビルの建設現場で、職人さんが、ペンキの入ったカンを蹴飛ばしてしまったらしいのですが、それが、たまたま下を通りかかった方が、たまたま、ビルを見上げていた、その顔に、ペンキが降りかかったのです。』 ノットソン  『なんと。』  依頼人  『当然、ビルを建てている管理会社が謝罪しました。病院代や、慰謝料も、払うことになった。しかし、その人は、うちの古くからの氏子の方で、この写真の一人だったのです。』  ダジャレー  『ふうん。不運な、方ですな。それで?』  依頼人  『それで、4人の方が誰かが、分かりました。みな、世界最大の人材派遣会社系列の、『銀河系ワークス・トップ社』の、本市支店長、部長、課長、係長です。ペンキが襲ったのは、支店長さんでした。さらに、昨日、課長さんと部長さんが、晩御飯を買いにコンビニに寄ったさい、巨大な猫、5にゃんこに襲われ、弁当を奪われたうえ、戦ったさい、擦り傷を負いました。係長さんは、びくびくしてる、らしいです。』  ダジャレー  『呪った張本人の目星は?』  依頼人  『それが、ここ5年間で、事実上、首にしたのは、7人ありますようです。こちらが、リストです。若い人ばかりです。この会社、給与などの待遇は悪くないが、なかなか、仕事はハードみたいです。うまくないと、すぱっとやります。』    ダジャレー  『外資系なら、そうかも。で、どうしたいですか? もし、だれかが、実際、呪ったとしても、今の我が国では、呪っただけでは、不能犯だし、未遂にもならない。脅迫されていたりしたとかは?』  依頼人  『そういうのは、ないそうです。ただし、不当解雇や、予告手当ての不払いで争ったことはあるようですが。私有地に不法侵入と、木の破損で、訴えられないかと。ただし、我々としては、最終的には、あまり、警察沙汰にはしないで、うまく、折り合いたい。なにか、理由がないと、やらないでしょうし。会社も、今は厳しくて、イメージダウンは、痛いらしい。』  ダジャレー  『まあ、いま、時間があるので、調べてみましょう。』        🕯️ 🕯️  ダジャレー  『やましんが、呪ってやる、みたいに言われたことが、むかしあるとか、言ってたな。病気にもできる、とか、いわれた、らしい。』  ノットソン  『さいきん、話題のか?』  ダジャレー  『いや、そうでは、無いらしい。詳しくは、話せないとか。まあ、人類は、まだまだ愚かだが、因果関係にはうるさい。辻褄が合わないのは嫌らしい。むかしは、丑の刻参りを犯罪にしていた時代もある。いまは、この国では呪いで殺人が可能などとは、科学的にあり得ないとされる。しかし、なぜだか、幽霊や魔物がいると言われたり、その映像がテレビに出たりするのは、明らかに矛盾だし、宗教的行事もこともなく、行われるし、タブーもある。興味深い。』  ノットソン  『色んな都合があるんだろ。人類は、都合で生きる。まして、あんたも、宇宙妖怪だろ。』  ダジャレー  『都合ね。宇宙妖怪は、種も仕掛けもあるんだ。ただし、人類には、まだ、未知だが。まあ、ひまだから、ちょっと、張り込みしてみるよ。』                🕯️  ノットソン  『あれは、どうなったの?』  ダジャレー  『あれか。きみ、信じるかい? 映像見せようか。』  ノットソン  『ああ。ぜひ。』   そうして、ノットソンは見たのである。  深い夜。深い森のなか。  なにかが、蝋燭を灯して、行進している。   それは、人間ではない。  姿が、下草に隠れて、良く見えない。  しばらくして、草がなくなると、正体が分かったのだ。  せんごきにもなろうかという、ごき軍団である。  先頭のにごきが、蝋燭をあたまに灯している。  つぎのなんごきかが、藁人形と、写真をかざして運び、つぎのなんごきかが、木槌を運んでくる。  そうして、ある木の下に達した。  すると、なんとも言えない、不気味な音を、たくさんのごきが立てるなか、前方のごきたちが、するすると木に登り、藁人形に、写真を重ねた。  あとから来たごきたちが、釘をあてがい、さらに上方に上がった他のごきたちは、木槌をぶら下げて、振り子のように揺れながら、釘を打ち付けた。          🔨    ノットソン  『な、なんと、おぞましい!』   ダジャレー  『どこの、ごき軍団かは、わからないよ。』  ノットソン  『やましんさんには、聞いたかい?』    ダジャレー  『おいら、知らない。だ、そうだ。』  ノットソン  『しかし、おわ、この写真、やましんさんだ。』  ダジャレー  『まったく、だれに、恨まれるか分からないなあ。しかし、定石から言えば、ぼくが見たから、この、呪いは、無効だね。』  ノットソン  『他人に見られたら、無効か。』  ダジャレー  『そうさ。それが、重要なんだ。誰にも知られずにやらなくてはならない。しかし、人間は弱いものだ。すぐに、病気になるし、怪我もしやすい。呪われたのか、自然の為せる業か、区別はつかない。誰かが、解説しなければね。しかし、呪いなんかない、と、法律解釈みたいに割りきれば、問題にはならないが、なかなか、割りきれてはいないんだ。まだまだ、人類の技術や、医学は、発展途上だ。やましんさんも、ガンマーカーが高くて精密検査指示されたときには、御守りを買いにいった。それが、人情さ。御守りは、1000ドリムしない。しかし、そこに、だれかが、不当につけこむのならば、やはり、それは、罪深いよ。』 ノットソン  『それは、その通りだ。しかし、この映像はなんだ? きみ、創作したかい?』 ダジャレー  『争いには、したくないって、依頼人も言ってたろ。これを、一応の結果として渡したよ。』 ノットソン  『はあ? ぜんたい、だれが、呪ったの?』 ダジャレー  『まあ、なかなか、むつかしいな。一応、リストの7人には当たった。ひとりが、藁人形を打ったことは、認めたが、それだけしかしてないという。それだけなら、罪にはならない。トラブルは、偶然だろう、彼が意図的にできることではないよ。話を聴けば、かなり、職場内の、ある種の パワハラがあったらしいし、不法侵入は事実だが、だれでも出入りできる場所だからな。なんだか、気の毒だ。だから、あの映像を写したのさ。パワハラした側は、あまり、認識がないことが多い。しかし、なにか、感じるところはあるだろ。もう、やらないと約束したしね。』   ノットソン  『結局、オカルトじゃん。やましんさん、呪ってるのは、だれ?』    
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