《1部・1》

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「僕をくれませんか?」 これがウィルと俺の出会いだった___ 俺はリアム・エドワーズ、23歳。 英国(イギリス)ロンドンのウェストミンスターに暮らしている。 大学を卒業してから、市街の高級レストランでシェフ見習いとして働き始めた。 将来はいつか自分の店を持つのが俺の夢だ。 しかし現実は甘くはない、就職したのはいいが一年近く働いてもやる事といったら雑用に料理のアシスタントばかり...まともに作らせてはもらえない。 俺は店が閉店してからの後片付けの合間に残った料理から味を勉強し、作ったりしている。 “技は盗んで覚えろ”確かにそうだ。 俺は今日も閉店後の後片付け&料理の勉強で店を出たのは23時頃だった。 自転車で通勤している俺はいつも途中にある広場のベンチで一服(いっぷく)する。 シェフ(見習いだが...)が煙草なんて本当はいけないが、一日溜まったストレスをコレ一本で解消出来るならこの一服だけ大目に見て欲しい。 しかし日毎(ひごと)に寒くなってきた。 俺は携帯灰皿に煙草を入れると、帰ろうと立ち上がった。 すると突然、後ろに人の気配がして俺は振り返った... “おいおい勘弁してくれよ、変質者やヤンキーは御免だぜ” 俺の予想とは相反して、そこに居たのはとんでもなく綺麗な子供(ティーン)だった。 丁度、街灯の下だったので相手の顔を見る事ができた。 身長は175cmくらいだろうか、緑と灰色が混ざったような()で俺を上目遣いで見ている。 ミルクティー色の顎まである髪が風で揺れていた。 家で明日の宿題かゲームをしているようなガキがどうしてこんな時間にこんな場所に居るのか? そんな疑問と同時に相手が口を開いた... 「僕をくれませんか?」 この時初めてコイツが男だと分かり、そしてイギリス人ではないと分かった。 何故か? (なま)りがあったからだ。 それもイギリス国内ではなく、何処か違う国の言葉の訛りだった。
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