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「..お邪魔します」
さっきまで無邪気な表情をしていたウィルは俺のアパートの部屋に入るなり、急に緊張したような面持ちになった。
「狭いけど好きに寛いで」
俺は着ていた上着をポールハンガーに掛けた。
俺の住んでいる部屋はキッチンがあるダイニングに隣にリビングがあり、その奥に俺のメインの部屋がある。
「腹減ってるだろ?何か作るよ」
「ありがとうございます!!」
ウィルは緊張が解れたのか、嬉しそうな表情を浮かべた。
「何かアレルギーとか苦手なものはある?」
「いえ、ありません」
ウィルはダイニングテーブルの椅子に座り、行儀よく座りながら答えた。
俺は冷蔵庫から適当に残り物の食材を取り出し、キッチンで料理を始める。
きっとろくに食べてないだろう、だから俺は栄養があり尚且つボリュームのある料理を作った。
「さあ、冷めないうちに食べな」
「わぁ!すごく美味しそう!!いただきます」
俺は向かいの席に座り、俺が作った料理を旨そうに食べているコイツを眺めていた...
するとウィルは食べている手を止め、俺を見ると
「すごく美味しいです!こんなに美味しい料理食べたの初めてかもしれません」
「大袈裟だな、..でもありがとな」
この時俺は心の底から嬉しかった..店じゃあろくに料理を作らせてもらえないし、俺の初めての客はウィルだった。
高級レストランに来る金持ちとか、コイツみたいなガキとかそんな事はどうでもいい。
料理を食べて喜んでくれる顔が俺は好きなんだ。
「リアムさんは食べないんですか?」
「俺はもう済ませてるから」
仕事の時はレストランで賄いを食べている。
「ゆっくり食べてろよ、俺はシャワー浴びてくるから」
「はい!!」
***
俺がシャワーから戻るとアイツは自分の食べた食器を洗っていた。
「そのままでよかったのに」
「いえ、ご馳走になりましたから」
「後は俺がやるから、お前もシャワー浴びて来るといいよ。俺の服貸すから」
ウィルは水道の蛇口を止め、タオルで手を拭くと
「それじゃあ、お借りします」と、笑顔で小さく頭を下げた。
残りの洗い物を済ませ俺はリビングのソファーでテレビを観ていた。
すると、髪を濡らしたウィルがシャワーを浴びて戻ってきた。
俺の貸したトレーナーはウィルには少し大きかったようだ...確かに10cm位は身長差があるし、ウィルは華奢な体型だ。
手の先まですっぽりと隠れているのが、まるで大人の服を着た子供のようで可愛かった。
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