一章 ニコイチ

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一章 ニコイチ

 未曽有の豪雪に見舞われる農村であった。今朝から延々と風雪が吹き付けるせいで、質素な家屋や広大な畑といった農村ならではの光景は、もれなく雪化粧に覆い隠されてしまった。こうなってしまっては耕作もままならず、農民らは、小屋に籠って耐え忍ぶばかりであった。それでも、これほどの風雪に晒されては、小屋が軋んだ音を盛んに立てるものだから、誰しもが心許無(こころもとな)いと思っていた。  年端のいかない幼子となればなおさらで、とりわけ並々ならぬ不安を抱えるノノバラという少年がいた。六歳ほどであった。彼は、カノンという十四歳の少女と暮らしていたが、二人に血縁はない。彼女は、一年ほど前に農村へ越してきて、いまだ幼いながらも自立した生活を送り始めた頃、両親に先立たれしまったノノバラを不憫(ふびん)に思い、進んで引き取って面倒を見ている。それからというものの、ますます大人びて、母親と見紛うほどの佇まいをもってノノバラに接し続けた。その賜物か、二人の間柄は、最初こそぎこちなかったものの、徐々に打ち解けていき、今や本当の親子を髣髴(ほうふつ)とさせる関係を築いている。
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