一章 ニコイチ

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「飛ばされたら、すぐに新しいおうちを建ててあげるわ。だから、心配なんてしないで」カノンは、ノノバラの背後から、その小さな両肩に手を乗せた。 「うん…!ありがとう、おかあさん!」ノノバラは、屈託のない笑顔を見せた。  その時、玄関の戸が二回だけノックされた。豪雪の最中に来客とは思いもよらず、カノンは、心ともなく神妙にした。ただ、ノノバラが席から降りて、玄関扉に歩み寄っていくのを見るなり、血相を変えて「待ちなさい…!」と小声ながらも強い口調で制止した。  来客が来たら進んで対応しなさい、そうノノバラは、カノンから言い聞かされていたので、なぜかしら制止された事を不思議に思った。そこで、どうして止めるの、と訊いてみた。カノンは、ノノバラの手を引いて、再び席につかせると、「もうすぐ朝食が出来上がるから、それまで静かに待っていなさい」と言い聞かせてから、調理に戻っていった。
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