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床に投げ出された砲金色の結晶を、カノンは、両手で拾い上げて、まじまじと見つめた。その結晶が何なのかは、ノノバラの知る所ではないものの、それから放たれる虹色の光彩は、子供心にも美しく映った。一見すると、謎めいた文言が彫刻された菱形の岩塊であったけれど、光の当たり方によって実に多種多様な発色を示す奇石であった。見惚れていると、そのうち触ってみたくなったので、ノノバラは、手を伸ばして結晶を掴み取ろうとした。ところが、カノンが矢庭に立ち上がったものだから、あえなく取り損ねたばかりか、彼女の厳かな視線に見下ろされる事となった。
「駄目よ。これは、おもちゃじゃないんだから」
ノノバラは、むきになって、目に角を立てた。結晶をふんだくろうと躍起になって掴みかかろうとしたので、カノンは、鋭い語勢で一喝した。
「こら!騒がしくしない!」
まもなくノノバラは、しおらしくなったばかりか、悔し涙を浮かべた。なので、カノンは、結晶を懐にしまい込むと、また屈んで、ノノバラと目を合わせた。そして、微笑を浮かべてこう諭した。
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