一章 ニコイチ

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「いい?あの石は、とても大事なものであって、ここにあっちゃいけないの。だから、わたし、行かないと。これから少し出かけてくるけど、もう一人でお留守番できるわよね?」 「こんな時に、どこいくの?」ノノバラは、首を傾げて尋ねた。 「雪が止む頃には帰るわ。それまで、おうちで大人しくしてなさい。朝ごはんも作ってあるし、大丈夫よね?」 ノノバラは、言い知れぬ不安をふと覚えた。カノンの瞳が、心なしか潤んでいるように見えたから。なので、首を横に振った。 「ほら、あんまり困らせないで」カノンは、ノノバラの両頬に手を当てて、揉むようにして撫でてやった。「少しの間だけよ。それまでの間だけ辛抱しなさいね」 それでもノノバラは、頷かないで、カノンの視線をじっと見据えているだけであった。  「どうしても一人ぼっちになるのが嫌なのね」カノンは、ノノバラを抱き寄せて、ひしと抱擁してやった。「約束するわ。わたしは、あなたを一人にはしない。たとえ離れ離れになったとしても、この温もりだけは永遠に消える事はない。だから、これからもずっと一緒よ」
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