Prologue

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Prologue

今から遡る事8年程前。 当時高校3年だった私のクラスに男女問わず人気の男の子がいた。 生徒会の会長をしていながら、陸上部で長距離走の入賞の常連だった彼はまさに文武両道という言葉がピッタリ当てはまった人だった。 先生からの信頼も厚く、後輩からも頼られ、たくさんの友達に囲まれて笑う姿を本当に眩しいと思っていた事をよく覚えている。 彼の名は、安西 慧珠くん。 成績優秀で、誰にでも優しく接する人だった。 私は2年.3年と2年間同じクラスだったが、ごく普通に接するクラスメイトの1人で、挨拶と必要があれば話す程度の仲だったように記憶している。 そんな彼の話題は、高校を卒業と同時になくなっていった。 県外の大学に進学が決まった私は地元を離れ一人暮らしとなり、年に数回程度しか帰省もしなくなり高校の友人達と会う機会がめっきり減っていき次第に彼の存在すら忘れていった。 大学を卒業し地元に戻らずこっちで就職してからは、更に帰省する機会も減り高校の友人達とは疎遠になっていった。 その代わり、大学時代の友人や社会人になってからの友人とはどんどん距離が近くなり、こっちでの生活がすっかり居心地の良いものになっていった。 社会人1年目の夏くらいだっただろうか。 高校時代の友人の1人と飲みに行った時、 『そういえば安西くん結婚したんだって。大学卒業と同時くらいだったらしいよ』 友人達の近況報告を聞きながらそんな事を教えてくれた。 『授かり婚かと思ったら違くって普通に結婚したんだって。歳上の人なんだって、凄く上品な大人の女性らしいよー。なんでもね、親が会社経営してるんだって、それって逆玉とかいうよね!凄いよねー、セレブ婚』 その友人が目をキラキラさせながら自分の事のように事細かに話していた。 その内容が本当なのか…それとも大袈裟に膨張して言ったのかなんて、そんなのどっちでも良かった。 あの優しい安西くんが結婚したんだ、そっか、幸せになってね。 それだけを思った。
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