とりあえず愛を

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この人が居れば仕事で辛く哀しい別れがあっても頑張れる。 きっと頑張れる。 ヘトヘトになりながら日直業務にレセプトをこなして新年を迎え、安西くんと元旦を過ごし2日はお互いの実家で過ごした。 数年ぶりで実家でお正月を過ごした私に、母親はあからさまに喜び兄はお年玉までくれた。 たった一泊でもこんなに喜んで貰えるなら来年もそうしようと思えた。 「スマートウォッチ良いな」 家に戻る私を駅まで送ってくれる車内で兄が私の左手を指さした。 「良いでしょ、欲しかったの」 「良い値段するんだよな」 「でも便利だよ、使いこなすにはまだまだだけれどね」 そう言って笑った私を兄は嬉しそうに見ていた。 駅のロータリーで車を停めて貰い安西くんを探すがまだ来ていないらしい。 「次は指輪でも買って貰えよ、うんと高いヤツ」 「え、」 「相手もこの辺のヤツなんだろ、まあそのうち会えるんだろうから今はいいけど」 私の頭をポンと叩くと、じゃあな、と笑って帰って行った兄を見送りながらなんとも言えない不思議な感覚になる。 数分後に現れた安西くんにその話をするべきかどうか悩み、結局しないまま部屋に戻ってきた。 相変わらず安西くんの部屋は広い。 春から一緒に住めるように、物件を探し始まった私達。 まだ決まったわけではないが、受かれば職場が安西くんの住んでいる此処から近い場所になる。 電車でもバスでも通えるようにと、安西くんが駅近の物件を見繕ってくれている。 そこそこのお家賃だが折半するから払えない程でもない。 設計士である安西くんは賃貸ではなく持家として建てたいみたいだが…。 暫く賃貸で一緒に住んで、その間に条件に見合った土地が見つかればそこに建てようと思っていると安西くんは話してくれた。 その時も安西くんの隣に居るのが私で有りますように…心の中でそう願った。 一緒にのんびり湯船に浸かりながら、お風呂は広い湯船が良いだの、ベランダでミニ菜園を作ろうだの、次々と未来の話を広げていく。 今はそれが楽しくて仕方ない。 私達の未来に結婚があるのかどうかは今はわからない。 それでも、なんとなく今はこれで良いように思っている。 兄はウンと高い指輪を買って貰えってふざけて言っていたが、それもまだ良いように私は思う。 そう遠くはない未来がチラッと見えるこの状況に今は満足しているのだ。 「どうしたの?」 ベッドの中で抱きしめ合って髪を撫でて貰いながら安西くんにそう尋ねられ、 「ん?幸せだなぁって。こうしていられるのって凄く幸せなんだなぁって」 素直に答えてギュッと抱きついた。 「そっか、良かった。俺も同じ」 「うん、良かった」 2人で微笑み合い良かったと頷き合う幸せ。
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