6 探索

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幸の首には半月型扼痕があり、それは人が首を締めた痕とみられ、警察は扼殺と断定していた。 頸部には皮下出血の痕もあった。 事実、自分は幸の首を絞めている。 いつもの悪い癖で、性交中にはどうしても気持ちが高まってくると、首を絞めたくなるのだ。 ちなみに幸の遺体に装飾品はなかった。 幸の首にあった扼痕は、性交中についたものだと思う。 決して人を殺した時についたものでは無いはずだ。 だが首に扼痕があり、しかも人の手で絞められてついたものであることがわかってから、それが幸を死に至らしめた死因の痕として認定されたようだ。 直接の死因は窒息ということになるが、それは実際には脳機能に大きな弊害が生まれ、脳の問題によって死に至るというのが根本的な死因であり、警察はそれがこちらの首絞めによって起こったと思っているようだ。 だが自分は幸を絞殺などしていない。 性交中に首を絞めたが、その後、幸は、平気な顔をしてシャワールームへ行き、すぐに帰るようなことを言っていた。 要するにその後、こちらがソファーで寝こんでしまっている間に何かが起こったのだ。 あのラブホテルは部屋の外の廊下にも監視カメラを付けていなかった。 だから警察は、当初は不審な存在を監視カメラに記録された映像から確認しようと思っていたみたいだが、そんな証拠の確認も結局成し得なかったようだ。 取り調べの時には、あの部屋に侵入した者はいないと、断定的に刑事は言っていたが、謂わば、あの部屋は密室状態にあったと言えるわけでは無いのだ。 そうなると、実際に幸の首を絞めている上に、あの部屋に唯一居た自分が疑われるのは必然だとは言え、まだ他の犯人説も考えられる。 しかし、幸の遺骨を引き取るために、幸の元彼ストーカー男役まで引き受けてしまったから、状況はさらに悪化しているのだが…。 自分が寝てしまったあの時間に何があったのか? そこを明らかにすることが一番の急務だと思った。
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