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2 エイリアンと暮らし
なんだかわからない配線と、腕の太さくらいの管が幾つも連なった工場内で、毎日同じ労働=運動を繰り返すだけだが、腕力をかなり必要とする労働なので、当然疲労する。
人手はいつも足りず、新人が入ってきたかと思うと1日か3日で皆辞めていく。
当然と言えば当然かもしれない。
ある時期は、自分1人しか労働する者がおらず、誰もいない工場で、ひたすら同じ動作の労働=運動を17時間も反復した。
工場内の作業が終了するまで、外側から工場には鍵が掛けられ、作業が全て終了するのに17時間かかったというわけだ。
その後で、やっと外に出た。
その日は500円ほどの割増料金がもらえたが、その事を給料日に確認した。
先月まで自分のアパートには、ある女性が住んでいたが、自分がエイリアンであることを知ると、とっとと出て行った。
近隣住民にも色々言いふらしたみたいで、たまに白い目で自分を見ている人間とすれ違うこともあるが、どうやらエイリアンなんて信じない住民たちには、あの女は頭がおかしいと思われたようで、たまにそう噂している人々の声が聞こえてきた。
頭がおかしいかどうかは知らないが、美しい以外何もない女だった。
だがその何もなさに親近感を感じていたのではなかったか?
麗のそんなところに。
最初この女も、どこかの星から流れ込んできたエイリアンかと思った。
およそ人間とは思えないほどの美しい姿形なのに、この女には何もなかった。
この星の人間ではないな、とすぐに思った。
一緒に暮らしてみると、つまらない女でしかないとわかった。
わかりきったことだが。
あまりにつまらない女すぎてエイリアンレベルに何もない女だったと言うだけだ。
あの女はきっと何処へ行っても何もない。
だがそれで一生を終えても、人間の生物学的ライフスタイルとして、それが稀有というわけでもないだろう。
よくあることだ。
きっとそんなものだ。
生物なんて。
かく言う自分だって、もっと何もないサイクルの果てに消滅するに過ぎない。
それをどうこう言うつもりはない。
そんな事は言ってはいられないことだ。
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